アナログで映像化するスウエーデンのすごい作家
映画「散歩する惑星」(2000年)
■製作年:2000年
■監督:ロイ・アンダーソン
■出演:ラース・ノルド、シュテファン・ラーソン、ルチオ・ブチーナ、他
映画「散歩する惑星」は、私が最近注目し、面白いなあと感心しているスウェーデンのロイ・アンダーソン監督の作品です。
ロイ・アンダーソン監督の映画はストーリーがあるようでないので、こんな話の映画ですとは言いづらい。ブラックユーモアとシュールな感覚による映像詩を味わうというのが適切なのかもしれません。そう、アンダーソン監督の作り出す映像を味わうというのが、私的にはピッタリきます。
独特といっていいブラックユーモアとシュールな感性は、最終的には人間存在を愛すべきものと見ることができ、愚かで悲しくも切ないトーンに全編が覆われているものの、どこかホッとさせる部分があるのです。それがアンダーソン監督の妙と言えるものなのかもしれません。
アンダーソン監督は映像は全てセットで撮影するといいます。メイキングを見たらビル街の映像も背景のビルは絵、車はおもちゃを走らせています。でも、全くそのようには見えず、屋外で撮影しているかのようです。セットには全く見えません。
それを考えると最後のシークエンスの映像はあっと驚くような映像表現で、これもセットならば驚くべき映像です。私はいろいろな映画を見てきていますが、数ある映像の中でも、この映画のラストの展開は目を見張るものがあると思います。
さらに「ミッドサマー」を思わせるような人身御供のシークエンスも、淡々と描いていますが痛烈な映像となっています。
ロイ・アンダーソン監督の映画、多くはないのですがはまってしまう稀有な魅力を持った映像作家です。