行くも地獄、戻るも地獄という問題作

映画「サンドラの週末」(2014年)

■製作年:2014年
■監督:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟
■出演:マリオン・コティヤール、ファブリツィオ・ロンジョーネ、オリビエ・グルメ、他

ベルギーのジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟による映画です。ダルデンヌ兄弟の映画は、カンヌ映画祭の受賞常連者からわかるように、常に良質な作品を提供している。毎回、考えさせられ見飽きることがない。映画の持つ力を一つの手本のような作品を作る、稀有な監督と言えます。

この「サンドラの週末」も、シンプルな映画なのに様々なことを考えさせられる映画でした。「ボーナスをもらえるか?サンドラを解雇するか?」それを投票で決めるという会社。そんな会社ってあるんだと、まず驚きました。日本じゃまず考えられません。

その投票に主任の解雇への圧力があったと、サンドラは社長にかけあい、再度、投票をすることになる。サンドラは週末の時間を利用して、同僚の家々を訪ね、私を解雇しないほうに投票してくれと頼みこむ。

ボーナスか?同僚の雇用か?そんな選択を迫られた仲間は、生活が苦しいのでボーナスは必要だと反発したり、あなたに投票すると言ってくれたり・・・。

その各々の家庭の返答がリアルで、とても考えさせられる構造になっている。このような状況におかれるケースは日本では、世間体を気にする村社会なので究極の選択を迫るようなことは稀なのだと思いますが、サンドラの身になってこのような行動がとれるのか?あるいは、訪ねてこられた時の対応は?あなたならどうするという世界です。私にはとてもとても、サンドラのような行動はとれません。

お金っていう本音を代弁するものが、そこにあるので、各家庭の返答もとてもリアルな感じがしました。毎回、ノックで撃たれてしまうような・・・、途中、サンドラが薬を使って自殺を試みるのもわかるような気がします。よく気持ちが折れないな、と。そして旦那もそこまでハッパをかけるのか、と。

そしてラスト、思いもよらぬ展開になり、様々なことを経験したサンドラの清々しいかっこよさの印象が、というか、誰かを蹴倒して前に進むのか、どうか?という問題がそこにはなります。

コロナ禍に置かれた中で、会社をたたまざる得ないところもあると思います。コロナは特定業種にむけて、ハンマーの一徹を振り下ろすかのように容赦ない打撃を与えています。私の知り合いもそれで苦しんでいる人がいる。努力だけでは、ままならないこの状況下の中で、この映画「サンドラの週末」は考えさせられる映画であったと思います。

さすが、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟!そして、マリオン・コティヤールの熱演が素晴らしい!と言いたくなる良質な映画でした。

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