現代ウィッチクラフト(魔女)の母と呼ばれる女性の本
「魔女の聖典」ドリーン・ヴァリアンテ (国書刊行会)
またしても魔女についてです。著者のドリーン・ヴァリアンテは、現代魔女術の創始者であるジェラルド・ガートナーの弟子にあたる人。これまで見てきたようのと同じように、現代の魔女は、キトスト教以前の原始宗教の神々を信仰するペイガニズムと呼ばれるものがベースになっています。この本はそれら全体像をまとめたものと言っていいかと思います。
ヴァリアンテによると現代の魔女は、古代女神信仰の祭司の末裔であり、インドのタントラや仏教、ドルイド教、スーフィズム、シャーマニズム、ウィリアム・ライヒのオルゴン理論、ユング心理学等の中にそれらとの共通性を見出して説明していきます。
ローマに支配されたよりも前の時代、ヨーロッパで信仰されていたドルイド教。このドルイド教は、魂は死なず死後は肉体から離脱し別の肉体へと移るという転生信仰であったこと。この転生信仰が仏教的なものと共通点があるといいます。(キリスト教流入後も一時的には、それらが異端とされるまでは、アーサー王で有名なコーンウォールでみられるように転生を受け入れてきた歴史があったという)
魔女と言えば、魔女の夜宴「サバト」です。サバトとは自然のサイクルに同調させるための儀式であり、大サバト(キリスト教のキャンドルマス、メイイヴ、ラマス、ハロウィーン)と小サバト(春分、秋分、夏至、冬至)があり、小サバトはそれぞれの季節の新たな宇宙の潮流を解放する時であり、大サバトは中間地点にあり、頂点であり、完成点と見なすわけです。そして魔女らは自然回帰なので裸で参加するのです。ちなみにこのサバトは古代ケルトの祭りの日であったこと、それがキリスト教にも引き継がれているのです。
この8つのサバトとは別に、満月ごとに行われるエスバットという祭りがあり、平均して1年に13回の満月があるので、13回行われます。これは満月なので月の影響が強まるのでパワーを得ようというもの。13とは魔女の数字だとか。ちなみに満月の夜に影響を受けるのがルナティック、狼男に変身するのも満月の夜です。満ちゆく月は自分の望むものを呼び寄せ、欠けゆく月の時は邪悪なものを消滅させるとヴァリアンテは言います。
<月の三相>
満ちる月・・・若い乙女・・・・・建設、召喚の時
満月・・・・・・・成熟した母・・・統合、完成の時
欠ける月・・・老婆・・・・・・・・・破壊、追難の時
魔術、魔女を見ていくと魔女の道具であるワンド(棒)や、アサメイ(儀式用ナイフ)、コードロン(大釜)、水晶球、魔術鏡などが登場してくるのですが、このブログのタイトルが「イントゥ・ザ・ミラー」とあるので、ヴァリアンテが霊視について何と書いているかを見てみたいと思います。霊視(スクライング)とは水晶球や水を流した容器、魔術鏡(マジックミラー)などの道具を凝視することで幻視を得る方法であると。
1.霊視の能力には人により個人差がある(ある人にとって良い状態が、他の人にとって良い状態とはがぎらない)。 2.霊視は月の大きな影響下にある(月が満月や他の特定の位相にあるとき、占いの答えが得られやすい)。 3.過去や未来の出来事が象徴的に表象される(経験を積むことが大切であり、ユングの「人間と象徴」が役に立つ)
霊視は魔法鏡を使おうが、高価な水晶球を使おうがその効果には大差がないそうで、自分に適したものが何であるかを知ることが大切であると。霊視で出現してきた象徴は、おそらくは真実を表しているが気を緩めると自分の不安や願望で脚色されてしまう不安定なものであることを知る必要がある。
ヴァリアンテによる願望実現法?『瞼に映るイメージに集中するのだ。眼を閉じ、そのままじっとする。自分の願望のイメージを発達させ、養うのだ。明確なイメージが形成できないならば、眼を開ける。鏡を凝視しながら、そのイメージに深く集中し、鏡の向こう側にある空間に、そのイメージを見ようと努めるのだ。自分の願望を三回口ずさみなさい。そして儀式を終えるため、もう少し香を焚く。』※「魔女の聖典」ドリーン・ヴァリアンテ (国書刊行会)から引用
ヴァリアンテによると、自分自身の行動に対して信念を強固にするために、願望を実現可能な領域にまで引き下ろすこと、そして、あたかも他人と会話するように行動することによって自信を得ることができるという。この文章を読んでフト感じたのは、私が好きな歌手に矢沢永吉がいるのですが、よくインタビューの映像をみていると自分のことを「矢沢」と呼んで、第三者もしくは別人格のように語っているのを思い出しました。よくはわからないのですが切り分けていくというのが、ひとつの秘訣なのかなと思ったのでした。
ちなみに中世ヨーロッパにおける魔女の迫害者たちは、魔女が透視能力があるから幻視するのではなく、悪魔が魔術鏡、水晶球へと映像を送信するがゆえに幻視が表出するのだと主張し、魔女は悪魔と取引をしているとして非難、迫害をしたといいます。
いろいろこの本には、他にもカバラ、ルーン文字、オガム文字や数秘など現代のスピリチュアルに通じるものがあるのですが、面白いなとおもったのが、ヘブライ文字。ヘブライ文字は22文字ありカバラの生命の樹やタロットカードに対応しているというのがあるのですが、この22を一週間の7で割ると(22÷7)、円周率のπに限りなく近くなるということ。円とは無限と永遠の象徴であり、こうした魔女的なものは世間的には怪しい・・・となるのですが、一方でまだまだ奥が深いと私は思うのでした(笑)