森に潜む魔女と孤立した家族の話
映画「ウィッチ」(2015年)
■製作年:2015年
■監督:ロバート・エガース
■出演:アニャ・テイラー=ジョイ、ラルフ・アイネソン、他
この映画はウィッチ=魔女をテーマとしたサスペンスホラーのテイストを持ちながら、いろいろなことを含んだ作品だと思いました。
まずは、家族崩壊の映画になっていること。そこには村という共同体から追い出され孤立して生きている一家族が、敬虔なクリスチャンであるが、貧困からくる疑心暗鬼の溝がどんどん深まっていき、やがて、自分の娘であろうと排除の方向にベクトルが向かって行くことです。強固な価値観があればあるほど、閉鎖的の中、飢えや不安は誰かを犠牲にしやすい方向に向かってしまうということです。
そして、行きすぎた信仰が内部矛盾を引き起こし、その信仰と照らし合わせ外的な邪悪なものを想定し、排除する行為事態が、実際にこの映画の舞台となったニューイングランド州の魔女狩り事件であるセイラム魔女裁判へと発展していく過程を寓意的に描いていると思えること。
しかし、仮想敵ではなく森が持っている超自然的な力を敬う者がいるということも描いています。赤ん坊を拐い、少年を死に追いやり、魔的な部分に取り衝かれた裸になって行う儀式=サバトの女性たち。ウィッチ=魔女です。
民間伝承、迷信、信仰、偏見、閉塞、疑惑、魔、等々の要素を用いながら答えを出さない見る側に委ねられた映画のような気がします。
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