アルゴリズムが人間の能力を凌駕した時、人類の未来は・・・
「ホモ・デウス」ユヴァル・ノア・ハラリを読む
出版されて久しいのですがイスラエルのユヴァル・ノア・ハラリ氏による「ホモ・デウス」。「サピエンス全史」が全世界で1000万部以上、そしてこの「ホモ・デウス」も快進撃を続けていて、現在最も注目される学者の一人が著者のユヴァル・ノア・ハラリ氏
この「ホモ・デウス」は、様々なジャンルを横断的に渡り、かつ、発想の独創性すばらしく読んでいても飽きさせない。そしてそれ以上に考えさせられる本で、「衝撃の書」といううたい文句は過大表現でもなんでもありません。
本との出会いはいろいろありますが、このような刺激的な本に出会うことはめったにありません。こんな私でもそう感じるのですから、世界的に注目を浴びるのがわかろうというもの。
ハラリ氏によれば、人類=サピエンスは、250万年の歩みにおいて、認知革命、農業革命、人類の統一を成し得た、それを可能にしたのはフィクションを生み出し、信じる力であったと。
ホモ・サピエンスは、一神教の登場により超人間的正当性を得て脆弱な体制を強固なものにした「宗教」、人間が作り出した一番の物語、信頼制度としての最強の征服者である「貨幣」、科学技術の発展により冨を増やすことに気づいた人間至上主義に基づく資本主義としての「帝国」、この3つにより人類の統一を実現した。
そして、現在と言えばAIとバイオテクノロジーにより、生命誕生以来の大変革の時代を迎えているという。生き物はアルゴリズムであり、意識、感情さえもアルゴリズムで制御可能であり、生命はデータ処理であるという思想。
AIによる知能は遥かに人間の曖昧な知能を凌駕し、意識という分野から切り離されてきている。その高度な知能=AI=アルゴリズムが、我々が自分自身を知るより遥かによく我々を知るようになるかもしれないという未来への可能性の示唆。
このような大変化は、この数十年のうちにやってくるという。超知能的な存在が支配するようになる時、ホモ・サピエンスは、神の能力を手にしたホモ・デウス(神の人)にアップグレードすることになる。
しかし一方でホモ・デウスとしての超エリート集団と心の中を覗き欲望を支配される無用者階級にわかれることになるという・・・。
ハラリ氏の警告はまんざらオーバーではないように思えてきます。それは、マイクロチップを体に埋め込んだ人が日本でも出始めているということ、そして何よりも今回のコロナ禍により、国家権力は急激にハラリ氏の警告する方向にむかっっていくことを加速化させているようにも思います。「ホモデウス」は、まるでSF小説のような展開を想起させるのですが、私たちの知らないところでそれは進行している・・・。
■世界の都市の監視カメラの数
人口1000人あたり
1.重慶 168.03
2.深圳 150.09
3.上海 113.46
4.天津 92.87
5.済南 73.82
6.ロンドン 68.40
7.武漢 60.49
8.広州 52.75
9.北京 39.93
10.アトランタ 55.56
※2020年7月5日・朝日新聞から
中国は世界的にみても断トツの監視国家ですが、日本もコロナ禍から感染防止のかけ声の中、監視国家に進可能性も大か・・・。
『最初は、データ至上主義は人間至上主義に基づく健康と幸福と力の追及を加速させるだろう。人間至上主義のこうした願望の充足を実現することによって、データ至上主義は広まる。不死と至福と神のような創造の力とを得るためにには、人間の脳をはるかに超えた、途方もない量のデータを処理しなければならない。だから、アルゴリズムが私たちに代わってそれをしてくれる。ところが、人間からアルゴリズムへと権限がいったん移ってしまえば、人間至上主義のプロジェクトは意味を失うかもしれない。
・・・・・・・・「すべてのモノのインターネット」がうまく軌道に乗った暁には、人間はその構築者からチップへ、さらにデータへと落ちつぶれ、ついには急流に呑み込まれた土塊のように、データの本流に溶けて消えかねない。
そうなるとデータ至上主義者は、ホモ・サピエンスが他のすべての動物ににてきたことを、ホモ・サピエンスに対してする恐れがある。』(「ホモ・デウス」ユヴァル・ノア・ハラリ(河出書房)から引用)
そうならないことを祈るばかりである。
※新型コロナ・ウィルスによるパンデミックが世界的に起こった直後、NHKのインタビュー番組に出演し、ユヴァル・ノア・ハラリ氏が語ったのを記事はこちら
コンピュータはあくまでも道具、主従逆転しそれに使われ翻弄される日常を作るのではなく、人間らしさを尊ぶ社会を重視する未来を目指したいものです。
ホモ・デウス(2巻セット)