此岸と彼岸が交錯する日本幻想譚

幻想朗読劇「夢泡雪」（ゆめのあわゆき）

私は江戸時代の作家・上田秋成に惹かれるものがあります。

秋成の「雨月物語」は、単なる幻想譚であること以上に、人の情念に強烈に訴えかけてくるものがあり、怪奇性という素材を得てそこに「もののあはれ」を感じさせ、教訓的ともいえる域に達している日本文学史上の傑作であると思うのです。

だからこの「雨月物語」は、江戸時代の読み物であるという時代を超えて、現代においても映画やドラマ、演劇に漫画といったジャンルの超一流の方々が触発され、上田秋成の原作とのコラボレーションをするのでしょう。

そして「雨月物語」なかでひと際、悲しみを誘うのが「浅茅が宿」。今も昔も変わらぬ待つ女の情念の世界。その献身的姿に悲しみを誘います。

そして、もうひとつ夏目漱石が驚くようなシュールといえる幻想小説を書いていました。「夢十夜」がそれ。

夏目漱石のイメージは、教科書にもでてくる小説という印象なのですが、この「夢十夜」の特に「第一夜」は、時空を超えてイメージが飛翔に美しい文体と共に眩いばかりの幻想譚となっています。

奇跡の作品と言っても過言ではありません。

日本幻想譚－時空を超え覚醒を呼び覚ます上田秋成、夏目漱石が描いた「異界」を、演技、朗読、映像、糸操り人形、音楽といった手法により立体的に作品世界を描き出し、「呼吸」、「身体性」、「倍音」、「リズム・時間的感覚」、「間」が響き合う幻想空間が実現しました。

演出と音楽は、私が最も信頼をおくアーティストである尺八奏者の中村明一さん。

演じるは女優の真行寺君枝さん。真行寺さんといえば私の世代では、資生堂の有名なCM「揺れるまなざし」の鮮烈なデビューが忘れられません。彼女は以外にもソクラテスを愛読しているそうです。

此岸と彼岸が交錯し、脳内のイメージと現実が折り重なる特異点。その特異点において、人間の心が時間・空間を超え、大いなる覚醒に呼びかける江戸・明治幻想譚をテキストに幻想朗読劇が上演されました。

幻想朗読劇「夢泡雪（ゆめのあわゆき）」をオンライン配信で作品をご覧いただくことができます。

視聴料：３,０００円（税込）

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＜出演者プロフィール＞

女優、アーティスト　真行寺君枝
女優、アーティスト。16 歳のとき、資生堂・秋のキャンペーン「ゆれる・まなざし」で圧倒的なデビューを飾る。以後、モデル、女優、アーティストとして、舞台、映画、テレビなどで活躍。独特の存在感をもつ。2004 年自身の手作り服の個展「手縫いの服」開催。現在女優業の傍ら「コスメティックメゾン シンギョージ・キミエ」を運営。自社の化粧品開発・販売を手掛けるなど、マルチに活躍。

浪曲師　東家 一太郎
早稲田大学卒業。2007 年二代目東家浦太郎に入門。2013 年浅草木馬亭にて年季明け披露。伝統的な浪花節の継承と同時に、「シートン動物記～オオカミ王ロボ」など現代人の心に響く新しい浪曲作品を作り、浅草での浪曲定席出演の他、各地域で会を開催。妻の曲師（三味線）東家美とのコンビは今日本で唯一の夫婦浪曲。

フリーアナウンサー　山田誠浩
元NHK エグゼクティブアナウンサー。「大河ドラマ・おんな太閤記」「NHK スペシャル」などのナレーション他多くの番組を担当。現在はフリーランスとしてNHK- E テレ「こころの時代」「知るを楽しむ」、ラジオ「視覚障害者のみなさんへ」などのナレーター、インタビュアー、キャスターを務める。また、ライブ朗読「山田誠浩朗読への招待」など全国各地で公演。　

糸操り人形遣い・写し絵(幻燈)師　平井 航
劇団での約十年に亘る修行の後、独立。人形と幻燈器の製作から操演までを一貫して手掛ける。「間近で感じて頂くこと」を本旨に、主に劇場の外をフィールドに個人で活動。 他団体への出演も多く、各地で「写し絵ワークショップ」を実施している。

作曲家・尺八演奏家　中村明一
バークリー音楽大学、ニューイングランド音楽院大学院にて作曲とジャズ理論を学ぶ。外務省・国際交流基金の派遣・海外からの招聘など、世界40 か国、150 都市で演奏。文化庁芸術祭レコード部門優秀賞（H11・17 年度）、第19回松尾芸能賞他受賞。作曲家としても活躍し、第18 回文化庁舞台芸術創作奨励賞。多方面から委嘱を受け作品多数。

箏演奏家　元井美智子
NHK 邦楽技能者育成会卒業後、沢井忠夫・一恵両氏のもと２年間内弟子修行。文化庁インターンシップ研修生、NHK オーディション合格、JILA 第5 回音楽コンクール邦楽部門3 位入賞、N 響メンバーによるカルテットと全国各地にて共演、JAZZ とのセッション、朗読とのコラボなど、多彩な演奏活動を展開。

映像作家　中川泰伸
東京造形大学在学中に監督した映画「閉じる男」が“PFF アワード1989” で審査員特別賞。矢口史靖監督映画「裸足のピクニック」の脚本執筆。DVD 作品「息吹呼吸法」をリリース。 映画評論家として「キネマ旬報」等で執筆。映像制作事務所 ARTMAN FILM を主催。

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