戦禍の中、大人の恋の逃避行がせつない

映画「オン・ザ・ミルキー・ロード」(2016年)

■製作年:2016年
■監督:エミール・クストリッツア
■出演:エミール・クストリッツア、 モニカ・ベルッチ、スロボダ・ミチャロヴィッチ、他

映画「アンダーグラウンド」で、その魅力にほれぼれした私。エミール・クストリッツア監督による「オン・ザ・ミルキー・ロード」を見ました。

かつてイタリアの真珠と言われたモニカ・ベルッチがヒロインで、クストリッツァ自らが、傘をさしロバに乗って銃弾をかいくぐりながら兵士たちにミルクを届ける牛乳配達人の男を演じています。

「戦争」というのは監督にとって避けられないテーマなのでしょう。この映画でも内線状態の祖国を描いています。戦争という混乱の中で翻弄されていく男と女の波乱万丈な人生を独特なコミカルなタッチで描いています。

テーマは重く、時代背景も暗いのですが、底抜けの明るさとコメディタッチ、溢れるような音楽と狂騒の祝祭 、さらに、あり得ないような寓意的展開により、映画というメディアを豊穣に表現しているように感じます。そのスタイルが興味深いし面白いんです。

映画は戦禍の最中、婚約者がいるミルク配達人が、どこか謎めいたイタリア人の美女と恋に落ちたことで、人生が大きく変化していきます。彼女の過去が原因で村が襲撃され(メチャクチャだ)、2人は危険な恋の逃避行へ。それがこの物語の浄化性を見事に描いていると思いました。

映画では動物が、他の映画ではここまで見事に描かれていていないのでは?と思えるほどに、とても素晴らしく表現されています。ハヤブサ、アヒル、鶏、蛇、熊。特に熊とじゃれあうシーンはどうやって撮ったの?と驚きの一言。この動物達が、いろいろな意味が込められているのでしょうが実にユニークでいいんです。

ラストシーンも平和への強い祈りを感じることができ、よかったです。エミール・クストリッツア監督の作品にのめりこみそう・・・ 

オン・ザ・ミルキー・ロード [DVD]

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