また明日と・・・「愛おしき隣人」

映画「愛おしき隣人」(2007年)

■監督:ロイ・アンダーソン
■出演:ジェシカ・ランバーグ、エリザベート・ヘランダー。ビヨルン・イングランド、他

北欧のとある町の人々の日常をユーモラスかつシニカルに描いた、ロイ・アンダーソン監督の「愛おしき隣人」。

物語はあるようでない、エピソードの羅列。多様な一般市民たちが織り成す、さえない日常を描いています。彼らはそれぞれが夢や悩み、孤独を抱えながら生きており、思うようにならない人生の情けなく感じる瞬間をユーモラスな視点で捉え、淡々と映し出されます。

アンダーソン監督は誰にでもある日常のちょっとしたことを逃さないで、「あるある」の感覚で、生きていくうえで人間の滑稽さを映し出すことにより、人間って愛おしい存在だよなと共感を起こさせる独特の手法。登場人物はほとんど素人俳優で演じられているのもユニークで、これがさらに映画の魅力に寄与しているようです。

こんな映画を作る監督、どこにもいません。ロイ・アンダーソンは唯一無二の映画監督といっていいでしょう。彼は決して多作ではなく、わずかしか制作していないのが残念です。

映画のラスト、人々がさりげない日常の行いをしているとき、無意識になにげなく空を見上げると、目が空に奪われてしまいます。数多くの戦闘機が飛んで来るのを彼らは見るのです。これは意味深な象徴的な表現です。映画はここで終わってしまうので、その後、愛おしき隣人たちは戦禍に巻き込まれてしまうのか?

明日はほんとに来るのかという不安、明日が来るということのありがたさ、そうしたことを突然考えさせられる映画です。いろいろな映画賞を受賞しているし、こんな稀有な映画は滅多に出会えることはないでしょう。

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