パラレルワールドが侵食する「火喰鳥を、食う」

映画 「火喰鳥を、食う」 (2025年)
■監督:本木克英
■出演:水上恒司、山下美月、宮舘涼太、他
映画「火喰鳥を、食う」は、ミステリーとかホラーとか境界があいまいな感じでした。面白いのはパラレルワールドとか執着といったキーワードでいろいろなことが語ることができる話と言うこと。激戦地の戦地、次々と仲間が亡くなっていき飢餓に襲われ、ずっとつけてきた日記に「ヒクイドリ、クイタイ」という謎めいた言葉を残し、死んでいった貞市。その遺品にが現在残っていて、遺族に届けられることを発端に、現実が徐々に歪み、存在しないはずの過去が現実を侵食していく。そこに浮かび上がるのは、強い執着が現実を変えるという、論理を超えた世界観。
私は、映画を観る前に原作を読んでいたので、まだわかりやすかったのですが、これがまさかのパラレルワールドに通じる話なんて、映画だけを見た人は、ちょっとわかりづらかったんじゃないのかな?と感じました。不思議な理解できない現象が目の前で起こるのが、実は、過去から現実が書き換えられてしまうパラレルワールドの世界なんだということ。
それが執着にあるということ、極限状態で生きたいという執着が、今ある現実を根底から変えてしまうということ。さらに、ヒクイドリ、クイタイと言う言葉は、人肉ということを想起させるような場面もあったので、恐ろしさがさらに増してくる。主人公の雄司からしたら、いま自分が生きているこの世界が、理解不能なまま変化していき崩壊しいっているというていくという恐怖が、映画を貫いている。
本木監督は、丁寧に描いているので、原作を読んでいた私は、面白く見れたから、これって、不思議に魅力があるので、もしかしたら海外でも受けるんじゃないのかな?と思ったこと。この世界観は、ミステリーでもあり、ホラーでもあり、SF的要素もかなり強いなと感じたからです。キーとなるのが、執着であり、それが現実を変えパラレルな世界を作ってしまうということを描いているので、新鮮な感じがしました。
構成がすごくユニークなのが魅力なのですが、やはり、わかりづらい。話についていくのが必死という感じなので、そこは大胆にわかりやすく描き、なるほどという説明的な要素もさらに加えると、これは映画史に残るような作品になるんじゃないのかな、と思いました。なぜ現実がこうなったのか理解不能というのが、ある意味でこの作品の、よくもわるくも特徴だと思うので個人的には惜しいなというのが感想です。