女心は握手するのか?「チャルラータ」

映画「チャルラータ」(1964年)

■監督:サタジット・レイ
■出演:マドビ・ムカルジ、ショウミットロ・チャタルジ、他

インド映画の巨匠サタジット・レイ監督の『チャルラータ』は、最も完成度が高いと自ら評した作品で、インドでノーベル賞を受賞した詩人タゴールによる小説が原作。レイ監督は「最も欠点が少なく、もう一度作るとしたら一切変えず撮るだろう」と発言している作品で、ベルリン国際映画祭で監督賞を受賞した作品。

たしかに、様々なシーンが繊細に撮られています。しかし、この映画が60年以上前の映画であるということも念頭に置かないと、不完全燃焼に終わるのでは?と思わないでもない。インド社会というものがわからないのと当時の社会事情というのも分からないからだ。

舞台となっている19世紀末のインドはまだイギリスから独立していない、その点においてイギリスの選挙の話題が出てきたり、イギリスへの渡航の話が出てくるのも、そうなんだぁ~と思う。

主人公のチャルラータは、新聞社を経営し召使もやとっている裕福な家庭の奥さん。冒頭、おしゃれな双眼鏡で街の様子をみる場面があるが、そのに映る市井の人は裸足でありとても貧しい。しかし、チャルラータの閉ざされた空間とそれにへきへきしている感じも伝わり、なに不自由ない暮らしと外からは思われていても、彼女の心は空虚であるというのが見てくる。演じるマドビ・ムカルジという女優の微妙な表情がいいなと思う。

映画全編に渡り主人公の女性の、退屈であったり、孤独であったり、そこからくる夫の従弟との疑似恋愛感情?ともとれなくもない感情の揺れというのが伝わってきます。

さらに、ラストシーンはえっ?と思わせる終わり方。フィルムが切れたの?と一瞬、錯覚する。夫婦和解の握手と思ったら映像が静止画になりそこで終わる。そのあとどうなるかという、未来は示されず、観る者に委ねられる。このラストシーンは映画史に刻まれる名シーンとパンフレットにあったが、60年以上前に、このような演出をしてみせたレイ監督にはびっくりした。

Follow me!