猿の神話が始まるリブート版「猿の惑星」

1.猿の惑星:創世記(ジェネシス)2011年

■監督:ルパート・ワイアット
■主演:ジェームズ・フランコ、アンディ・サーキス(シーザー役・モーションキャプチャ)

2.猿の惑星:新世紀(ライジング)2014年

■監督:マット・リーヴス
■主演:ジェイソン・クラーク、ゲイリー・オールドマン、アンディ・サーキス

3.猿の惑星:聖戦記(ウォー)2017年

■監督:マット・リーヴス
■主演:ウディ・ハレルソン、アンディ・サーキス

1968年に始まった映画「猿の惑星」はSF映画史に残る金字塔です。初めて見たのは子供とき、テレビでみましたが、ラストの自由の女神が埋まっていたのには、子供ながら衝撃でした。あれから映像技術が飛躍的に発展し、2011年から、新しくリブートし、新シリーズが始まりました。CGなのか判断がつかないような猿には驚かされます。そこで今回はリブートされた「猿の惑星」を見ていきたいと思います。

映画は、猿が知恵を飛躍的に壮大させ彼らの文明を築いたシーザー一代記となる『創世記/ジェネシス』『新世紀/ライジング』『聖戦記/ウォー』の三部作が作られています。全体を通してみると新たなる神話の再構築のように見てきます。

2011年に製作された1本目の『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』。この映画では、いかに高度な知性を持った猿が生まれたかが描かれています。その出発点は、医療研究、特に認知症の改善のための薬の開発により、脳の機能が飛躍的に良くなる薬の開発で、実験道具にされた猿の知性が高度化したことが描かれています。驚くべき知性を獲得したシーザーと名付けられた猿は、育ての親である人間と猿の狭間に揺れ、アイデンティティを模索し、やがて猿は猿であると人間社会から仲間を引き連れて独立します。

新薬の開発、薬への依存、動物実験など致したがないのですが新たな人間と同等の知性の持ち主の発生が描かれています。そしてこの新薬、どうやらウィルスらしきもの、が効くとわかると企業が開発をさらに進め、バージョン2が生まれ、それが進められるのですが、実は猿に効いても人間には免疫力がなく死を招くものであることが暗示されて終わります。

そして3年後の2014に第2作『猿の惑星:新世紀(ライジング,)』が公開されます。森に入ったシーザーらは、新たなコミュニティー、村を形成しています。ここで映画の冒頭、映画が苦手な私でも聞き取れた言葉が語られました。

人類はウィルスで壊滅状態となったことを説明するのですが、冒頭で語られたのは「stay home」そうです。コロナ禍の時に、盛んに語られたフレーズです。コロナになる前に作られたこの映画、数年後にまさかstay homeが、さかんに言われてしまう世の中になるとは。ウィルスも中国・武漢から?と言われたように、人が介在していたのか?

シーザーは人間との共存を理想に掲げるも、人間は猿として下等動物としてみているし、また、仲間の中で人間に虐待されたトラウマを持つ傷だらけのコバという猿が、人間を制圧しようとします。人間が過去にやったことが、自分たちに帰ってくるのです。コバは自分の想いを遂げるべく、じゃまになったシーザーを排除し、人間たちと戦争が起こります。

他者の世界を攻撃し、支配しようとするのは、結果的に、人間の世界と同じことが猿の世界でも起こってしまう。ある一定以上の文明を築くことと暴力、権力は表裏一帯のことなのか?猿の惑星は問いかけているように思います。

そして第3作目『猿の惑星:聖戦記(ウォー)』は2017年に公開されます。聖戦とは人間たちとのさらなる戦いです。彼らによって妻と息子を殺されたシーザーの中に復讐の念が湧いてきます。

猿たちは決して同胞を殺さないとうたってきたシーザーは、実は第二作で人間への復讐を誓って行動したコバと同じではないかと苦しみます。そして、最終的には自らの犠牲によって、まるでモーセのごとく猿たちを率いて新天地へと導き、神話化し伝説的存在となり、この三部作は終わります。

リブートされた「猿の惑星」は、人間中心主義への問いかけ、エコロジー、バイオテクノロジー、感染症、テロリズムへの問いかけ、動物倫理への問いかけなど、様々な問いかけ、要素を組み合わせた新たな「猿の」神話の構築に成功していると思いました。

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