隠されてきた歴史の悲劇「カティンの森」

映画「カティンの森」(2007年)
■監督:アンジェイ・ワイダ
■出演:マヤ・オスタシェフスカ、アルトゥル・ジェミイェフスキ、他
アンジェイ・ワイダ監督の『カティンの森』は、第二次大戦中の1940年春、ソ連によってポーランド将校らが大量虐殺された史実を描いています。その数、なんと15000人。1943年カティンの森で数千人と遺体が発見され、ドイツはソ連の仕業と糾弾するが、ソ連は否定。
戦後、ソ連の影響下でポーランドは社会主義国家となり、民主化されるまで、40年以上にわたってこの事件は語ることを禁じられ、カティンの森の大虐殺は、「ドイツの犯行」として歴史から消されてしまった。国家は嘘を言い続け、歴史を捻じ曲げたたのです。
1983年、ソ連はカティンの森に「カティンの地に眠る、ヒトラーのファシズムの犠牲者・ポーランドのために」と記した記念碑をたてる。が、1900年、ゴルバチョフがソ連の犯行と認め、ポーランドに謝罪。このようにカティンの森の事件を語ることができには、ポーランドの民主化を待たねばならなかった。
この悲惨な事件は、スターリンの指示によって行われた。それは、ポーランドをソ連の支配下に置くため、将来の独立、再建を防ぐために、独立を主導しうる人物層を排除したかったからと言われている。
映画は虐殺の犠牲になった家族の物語として描かれています。夫が帰ってこない絶望、真実語ることができない苦しみ、ソ連に対する不信などの政治、戦争に翻弄される家族の視点から描きます。
アンジェイ・ワイダ監督の父親は、カティンの森事件の犠牲者でした。この映画を製作した時、ワイダは80歳を過ぎていた。なので、この映画はワイダにとっては悲願だったのかもしれません。
この映画をみて、ふと思った。ロシア・ウクライナ戦争をポーランド市民は、たてまえではなくて本音の部分で、どうおもっているんだろう?と。