インド細密画で神々を感じる

先日まで府中市美術館で「インド細密画展」を開催していました、(2023年11月26日で終了)。このインドの細密画は、西洋にも日本にもない独特のものらしく、インドのムガル帝国やラージプト諸国の宮廷で16世紀後半から19世紀半ばにかけて描かれたといいます。

緻密な技法で作品を小さなキャンバスに描かれたので、当然、絵自体も大きくはありません。。小さな面積に、インド神話の神々や英雄、王族や女性たちが豪華な衣装をまとった姿で描かれています。なぜ小さなサイズに描かれたのかというと、観る者と絵との対話を促すためなのだそうです。要するに絵と対話することが魂の浄化に繋がるとされたそうなんです

これらの美しい線と色彩が宝石のように輝く絵画には、大地から生まれた自然への畏敬や感受性、情熱的な信仰心が込められています。これは、古代から築かれてきたインドの複雑で深遠な文化の一端を物語っています。また、

この細密画には、ヒンドゥー教の神々や有名な叙事詩『ラーマヤーナ』に登場するラーマ王子やハヌマーンなどが絵のモチーフとして描かれています。インド神話は膨大なので、こうした絵に描かれるとわかりやすいですね。ちなみに仏教もインドで生まれ、その過程においてヒンドゥー教の神々を仏として取り入れていきます。例えば、ヴィシュヌは馬頭観音、シヴァは大黒天となり、叙事詩『ラーマヤーナ』も桃太郎の物語の起源とも言われています。

音楽の旋律や音色を絵に表現したのが「ラーガマーラ=楽曲絵」と呼ばれる作品です。曲の旋律の型、音色そのものを絵画化したものがラーガマーラ。音楽を絵画化した表現は、日本や西洋の絵画にはないインド独自の形式ということです。音楽も絵画も、言葉を介さない直感的な表現なので、その二つが合わさったのは、なるほどと思います。

インド細密画では、西洋のようにリアルな描写はしていません。よく見ると、描かれた顔はどの絵もよく似ており、体に対して顔が大きく、そして眼がとても大きく切れ長で、正面を向いた顔はなく横顔です。
絵自体は平面的な印象。その代わりに、色彩や線の美しさに焦点を当て、心に深い感銘を与える力を重んじてきましたと言います。インドの画家たちは、影を付けず、色の美しさを最大限に引き出そうと努めましたそうです。それがインド細密画の持ち味と言えるのかもしれませんね。

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