アルフォンス・ミュシャの絵は女神の世界・・・
「アルフォンス・ミュシャ展」(八王子夢美術館)
チェコを代表する画家のアルフォンス・ミュシャの絵は、いつ見ても、どれもひかれるのだ。今回、八王子夢美術館で開催された「アルフォンス・ミュシャ展 」(2023年6月4日まで)を見たのですが、そこで感じたこと。
ミュシャは「女神」を描いている。
ここで女神とは神話上の女性ではなく、感覚としては現代メディアのアイコンとして、たとえば、マリリン・モンロー、オードリー・ペップバーン、ダイアナ妃といったようなメディアに登場し人々を魅了し、残された映像が、その虚像的生きざまと相俟って、やがてシンボル的になり現代の女神としてなっていったそのイメージに近いといえるんじゃないかと。
写真ではなく、女性が魅せる一瞬の仕草と表情、何かを訴えているかのような瞳を描いた絵、そして、背景は自然の 、草花の紋様を配置したアールヌーボー様式。女神が自然の守護神だととしたら螺旋する自然の草花の紋様はピッタリなのだ。自然界に直線を見ることができないけど、ミュシャの絵は曲線美の世界そのものなのだ。
そして、ミュシャはとてつもなく多作である。
有名になったポスターはもとより、装飾パネル、本の挿絵、カレンダー、商品パッケージなど様々なデザインにミュシャの仕事は展開されている。そのいずれもミュシャの作風に彩られているのです。多作であるということは、それだけ世の中に受け入れられたということ。そして、今でもこうして展覧会が企画されているという事実。たしかにデザイン性が強いのだけれど、それを超えて訴えかけてくるものがあるということです。
「ミュシャ・スタイル」とも呼ばれる独特の世界観の絵。それは、どこかこの現実の世界とは違う女神たちの世界なのかもしれない。映画「ワンダーウーマン」は女性戦士アマゾネスらが住む架空の世界の国のダイアナという女性が主人公だったのですが、ミュシャに描かれた女神たちも、どこか女神たちの王国の住人のような気がします。
『変わらない固定化された女性像は女神化されやすいとなるはずだ。近現代の写真や映画の発明は、時間や時代を超越する永遠性を帯びた女神的な女性の姿を生み出してきた。現実ではない写真やスクリーンの中の女優は永遠に同じ姿なのである。』(※「女神誕生 処女母神の神話学」松村一男・著/講談社学術文庫より引用)