アントニオ猪木は、私にとって神話世界の英雄のようでした

アントニオ猪木さんがお亡くなりになりました。昭和のヒーローがまたひとつ、夜空に輝く星になってしまったということが残念です。ついこの間まで猪木さんの本を読んでいたので。私にとってのヒーローの一人といえばアントニオ猪木さんがあげられるだろうことは間違いないです。子供のころアニメでタイガーマスクの放送があり、プロレスブームが起こり、そのままプロレスが好きになりました。

小学高学年から中学生になると今の新日本プロレスをアントニオ猪木さんが、全日本プロレスをジャイアント馬場さんが旗揚げし活動していました。その時は猪木派?馬場派?という区分があり私は馬場派でしたが、大人になると個性が違う2人の馬塲さんの良さ、猪木さんの良さというのを認識できるようになりました。

中学一年生の時かな、アントニオ猪木対ストロング小林という試合があり、当時は日本人トップレスラー同士の対決はタブー視され、禁断の扉を開いたのが猪木さんでした。その試合をテレビでとても興奮しながら見たのを記憶しています。

結果、猪木さんが勝ったのですが、その勝ち方が劇的で、ブリッジで抱え込んだまま反り返って相手を投げるのですが、両足がリングから一瞬離れる戦いの壮絶さを物語るようなジャーマンスープレックスホールド。プロレスの美技という点でも完璧で、そのインパクトは子供の私に取っては相当なもんでした。

当時プロレスは八百長とか言われて、子供心に絶対に違うと思っていたもんですが、後年になりアングルという筋書きがあるとレフリーだったミスター高橋が暴露本を書き、ふざけるなー、それをいったらおしまいだろーと思ったもんですが、実際そうしたことがないと毎日試合をしているプロレスは、その身が持たないでしょうし、戦いのショーとして成立しないと納得もしたのですが・・・。

アングルがあろうとも、ショーであろうとも、八百長であろうとも、プロレスは人間が生身の肉体で表現し得る最高芸術の表現だと今は思っています。肉体と肉体がぶつかり合い、うわっ、この技危なくない?と思わせたり、自らの肉体を傷つけ流血したり、実際そのハードさから三沢選手をみるまでもなく、リング上での死という事件もありました。ここまで体を張って見せる仕事は他にあるのだろうか?と思います。

仕事としてプロレスを見た場合、子供のころに抱いていたプロレス観とはずいぶん変わってきています。そうみれば覆面レスラーもOK(よく考えたなと)、反則、凶器攻撃もOK、これらがプロレスの醍醐味であり、他の競技にはない絶対的魅力の要素なんです。もしオリンピックで覆面の柔道家が登場したら、ふざけるなってなりますよね。

プロレスはビジネス的側面もあるゆえに、「物語性」という付加価値があります。物語を生み出し、それを対決の最高潮に持っていき、観客動員、人気という流れに持っていくからです。その中でアントニオ猪木さんは物語を生み出す天才だったと思います。ファンの心をくすぐるのが、猪木さんは実にうまかったそう思います。タイガー・ジェット・シン戦しかり、スタンハンセン戦しかりです。

神話なき時代、猪木さんはプロレスというジャンルで神話における英雄譚を結果として演じたのだと思います。リアルタイムで猪木さんを見てきた人は、神話における英雄を追っかけていたと…。

猪木さんの本を読んでいると、実にすさまじい人生と感じるし、何よりも「体験」を重視していたということがわかります。行動あるのみ、行動し体験したことからしかわからないことがある。行動することの大切さを教えてくれたように思います。あるいは企画、私も時々突拍子もない企画を立ててそれが、当たることもあるしコケることもあります。その発想の原点はプロレスにあるように思います。

最後に猪木さんが、引退の時に読んだ有名な一説。まさに猪木さんそのものという気がします。合掌。

この道を行けばどうなるものか、
危ぶむなかれ。危ぶめば道はなし。
踏み出せばその一足が道となり、
その一足が道となる。
迷わず行けよ。行けばわかるさ。

Follow me!