人は、やっぱり「物語」が好きなんだということ
「クリエイティブ脚本術」ジェームス・ボネット著(フィルムアート社)
ある時、古本屋に立ち寄り気の向くままパラパラと本をめくっていたら、この「クリエイティヴ脚本術」なる本が、偉大な深層心理学者のユングの無意識の理論やジョゼフ・キャンベルの神話学をベースにしていることに気がつきました。何か脚本を書いてみようなんて大それたことを思っているわけではありません。
これは映画という物語を作り出すために深層心理や神話の考え方を導入した「物語論」なんだとわかったのです。私自身、よく映画を見ることがあるので、鑑賞の際の参考になるといいな、深みを与えてくれるヒントになればいいなと思ったわけで。それにユングは、学生時代にその本を読んで考え方に大きな影響を与えた心理学だしと、面白がって読んでみました。
アニマ・アニムス、通過儀礼、シャドウ(影)、アーキタイプ(元型)、トリックスター、老賢者・・・でてくるのは、まさしくユング心理学のキーワードばかり。
やっぱり人は物語にひかれ、物語を生きているんだということを、あらためて感じた次第。映画に小説、漫画にゲーム、ドラマにドキュメンタリー、さらにYouTube、スポーツに商品開発秘話、自己啓発もの、聖地の由来、男女のなれそめ・・・みんな背景には物語があるのです。ちなみに、脚本術とは物語の構造を理解することという内容なんだけど、分析ではなく、構造から入っているので意外と新鮮に楽しく読めたのです。
主要な要素(形を変えた実体、逆境、原因と解決、主要アクション、驚喜するもの、機運の変化)はすべて私たちの人生から素直に表出されたものだ。私たち自身が形を変えた実体であり、逆境は私たち不満の原因であり、そこには原因や結果があり、機運を変化させるためにやらなければならないことが主要アクションであり、それを実現するためにもっとも重要なものが驚喜するものである。・・・自分の夢に耳を傾け、身を投じて、行動を起こそう。(※「クリエイティブ脚本術」ジェームス・ボネット=著、吉田俊太郎=訳(フィルムアート社)から引用)