小説「ナイトメア・アリ―」は、タロット・ベースのカーニバル的世界でハードな内容

「ナイトメア・アリー」ウィリアム・リンゼイ・グレシャム著

書店であれこれ本を散策していると、確かギレルモ・デル・トロ監督によって映画化された「ナイトメア・メアリー」の文庫本が目に入ってきました。本の帯にはノワール小説の電気的傑作と書かれています。パラパラっと本をめくってみると、タロット・カードの絵柄とその題名が各章につけられています。つまり、タロット・カードの22枚の大アルカナに応じた内容になっているのだ。

私はタロット・カードの使い手でもないし、詳しくもありませんが、そのカードの持つ神秘性に興味があり、タロットに関する企画もやったりしていますし、現在進行形で進んでいる企画もあります。そんなわけで、本のタイトルも作者も初めて聞く名前だけど一度読んでみようと即購入。

見世物小屋が舞台となった小説でカーニバル的世界が、その裏面のドロドロした側面を描きながら、一人の男が詐欺的手法でのし上がっていき、没落していく話。私は以前、寺山修司にハマっていたことがあり、そこで寺山は見世物小屋の復権として「大山デブ子の犯罪」「毛皮のマリー」といった作品群で異形の人物を登場させている。また、私が好きな映画監督のフェデリコ・フェリーニについてはサーカスのカーニバル的そのものを描いています。この禍々しい世界とともにハードボイルドなタッチで「ナイトメア・アリ―」は描かれているのです。

読心術に千里眼、怪力男に電気椅子の見世物小屋の世界と、さらには降霊術、心霊術といった世界も出てくる。それらには巧妙な仕掛けがあり主人公の野心的なスタン・カーライルは、巧みにそれらの術を利用しながら人生を駆け上がっていくも、ぴょんなことから一気に没落していく。まるで人生そのものがカーニバルであるかのように、あるいは、「愚者」から始まり「吊るされた男」で終わる話は人生はタロット・カードそのものであるかのように・・・。

小説はかなり視覚的なイメージで書かれており、想像力を駆使しないとちょっと読みづらい気もしましたが、久々のハードなタッチの小説を読みました。ここで小説にでてくるタロット・カードについて言及された部分を引用してみました。

『偉大なるスタントンは薄く笑い、目の前のカードを指差した。「こいつはジプシーの占い師が使うタロット・カードって代物だ。はるか遠い古代より連綿と受け継がれたシンボルには、古代の叡智が長の年月、隠され伝えられているんだ」』

『<女帝>星の王冠をかぶり、金の球がついた錫杖を手にしてしかめっ面を向けている。ローブに刺繍された柘榴の実はいちごのように見えた。背後には切り抜きのような木が立つー小さな町の演劇の背景のような。足元には麦の穂が実っている。実った麦の匂い。座っているか内には金星のしるし。実った麦の匂い。』

『最初に出たカードは<隠者>だ。老人が杖をつき、灯籠の中で燃えている星で道を照らしている。それがあんたの探求ー人生の旅、いつもどうしても手の届かないなにかを探している。それが富だったこともある。それは女の愛になった。それからあんたは身の安全を求めたー自分自身とまわりの人のな。だが、あんたは不幸に襲われた。案んたの中のものが正反対の方向に引き裂かれちまった。』

※上記、「ナイトメア・アリ―」ウィリアム・リンゼイ・グレシャム/柳下毅一郎・訳(ハヤカワ文庫)より引用

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