楳図かずおの漫画「14歳」ハチャメチャながらも大切なことを伝えている
漫画「14歳」楳図かずお
楳図かずおの漫画「14歳」は近未来の話なのですが、あらゆるものが人工に置き換えられ、もはや生物がまともに住める環境ではない。人間の傲慢さが、地球からのしっぺ返しがあり、地軸は歪み、地球の自転の速度も上がる。植物は滅亡し、空は地上へと落ちてくる。人類の滅亡を描いています。
同じ楳図の作品で「漂流教室」と対になっているそうなのですが、「漂流教室」は人類滅亡後の未来を、「14歳」は人類が滅んでいく話を描いています。核のゴミをはじめ、人間が出したゴミは地球のマグマの中に流し混んじゃえばいいとそんなことをしてしまう・・・。無謀な人間、勝手な人間、エゴな人間、そうしたことが描かれる警告的な漫画。
そして何よりも預言的かつ辛辣であるのが、培養肉のスープに目玉が生まれ、やがて肉体ができ、超人的な頭脳を持つというダーク・ヒーローのチキン・ジョージ博士の存在。このキャラクターには、食べ物と生命という根源的な問題を考えることができるし、動物側の代表なのです。それが人間の女性に恋をして無力化してしまうのも、変というかユニークなんだけど。そして世界を牛耳じ、政治家も手出しができない金融資本家のトップ、まるで陰謀論のように、が不老不死を求めて人間を超えた怪物と化している。
話の展開は荒唐無稽、ついていくのが大変な奇想天外の設定。しかし、そこには愛と希望が描かれています。「漂流教室」と対になっているとは、人類が生き延びるために宇宙へと出ていった子供たちが、再び戻ってくるということ。
ネタばれにンあるので、あまり書けませんが大宇宙は小宇宙の中にあるということ。マクロコスモスとミクロコスモス。そして、人類が滅んだ地球において人間が忌み嫌う生き残ったゴキブリが、きっと人間がこの地球を助けに来てくれると希望を語るのは皮肉なものです。
この作品を読み私は、ますますストーリーテラーとしての楳図かずおを感じずにはいられませんでした。