静謐な夢幻空間に女性達が・・・、デルヴォーの世界

ベルギーの幻想的な絵を描くポール・デルヴォーという画家は、20代の頃シュルレアリスムに関する展覧会を見て、独特の世界に魅かれ、その名前を覚えた画家です。ベルギーにはデルヴォー以外に、ジェームス・アンソール、ルネ・マグリット、フェルナン・クノップフなどが思い出され、いずれも幻想的な作風なのでそんな伝統があるのでしょうか?(美術史は全くわかりませんが)

「海は近い」(部分)

そのデルヴォー、彼が活躍した時代はシュルレアリスム全盛の時で、あのアンドレ・ブルドンの評価も高かったようです。シュルレアリスムが表現しようとした無意識の世界、まさしくデルヴォーの絵は無意識な夢の世界そのもののような雰囲気を持っています。しかし、デルヴォー自身はシュルレアリスム運動に参加していたわけではなかったようです。だからデルヴォー自身は自分をシュルレアリストとは思っていなかったみたいですね。

「春」(部分)

いずれにせよデルヴォーの絵は一種独特な魅力を持っています。私的には、デルヴォーと言えばこの絵!とすぐに浮かぶ代表作のようなものはないのですが、あの静謐な世界のテイストとその世界を浮遊している女性たちの空気感のようなものを想起します。

「こだま」(部分)

それは、どこと特定できない場所、背景の建物はギリシアかローマの神殿のようで、そこに時代を超えてきたかのように電車が走っている。時間は月が煌々と輝く夜、そこに無言で佇む裸の女性や横たわる裸婦、彼女らの目は虚ろで何処か遠くを見ているようで、お互いコミュニケーションをとるでなく静かに存在し、詩的なムードも漂うどこか神々しい静謐な世界、そんな情景が浮かんできます。

「森」(部分)

それはまさしく夢の世界といっても過言でない夢幻空間。どこか懐かしい感じもしなくもない。一度見たら、変に共感していまう忘れられない世界をデルヴォーは提示しているように思います。もし似ている世界があるとしたらジョルジュ・デ・キリコの世界にちかいかも知れません。

Follow me!