チベットの「死者の書」について、あれこれ想いを巡らせて

人は死んだらどうなるか?という謎について古代より多くのことが語られて来ました。中でも一番有名なのがエジプトの「死者の書」、古代エジプト展を2つ見て、エジプトの死者の書の本を読んだ。そしてもう一つの「死者の書」それがチベットに伝わっているもの。

エバンツ・ヴェンツがヨーロッパに伝えたチベットの「死者の書」は、それにより広く知られるようになり世界が注目することになりました。この「死者の書」はエジプトのそれに模してつけられたもので、「パルト・トド ゥル」(日本ではパルトをバルトと多くは表現されています)という死者に対して読む枕経を指しています。

私にとってチベットの「死者の書」は、1993年にNHKで放送された「チベット死者の書」のドキュメンタリー番組のインパクトがとても強くのこっています。その番組で、死者の書なるものがチベットにあることを知りました。書店にはこのNHKドキュメンタリーを綴った本や、死者の書の訳本などが並びました。

放送当時、よほど反響があったのでしょう。その関連本やDVDが出たりそました。さらにチベット死者の書の本も、当時店頭に並びました。

輪廻転生を信ずるチベット人にとって、死後、どのような形で転生するのか?それが大切で、その信仰が生活の中にまで奥深く浸透しています。それは、チベットに旅行に行った時に、実際に全身を投げ出し五体投地で祈る姿を見た時に、その信仰の強さを感じたのが印象的でした。この輪廻転生ですが、人間に生まれ変われるとは限らないので、目の前にいる虫がもしかしたら肉親の生まれ変わりかもしれないということで、余分な殺生はしないそうです。

チベットでは死んだ遺体を鳥に捧げる、いわゆる鳥葬があるのですが、それは魂が抜けた肉体は抜け殻にすぎず、布施の心で動物に捧げるということなんです。チベット人にとって鳥葬は大切なことで、多くの人がそれを望んでいると現地の方に聞きました。全くそのようなことは、私にとっては、とても信じられない風習・文化なのですが、別の視点からみるとある意味で究極のエコロジー?なんじゃないかという気もしてしまいます。

このチベットの死者の書は限りなく伝説的のように感じています。というのはチベットに密教を伝えた開祖であるパドマサンヴァというインドの高僧が、将来その教えを受けるに相応しい人物が現れるまで、寺院や地中に秘蔵したといいます。これを埋蔵経(テルマ)といい、死者の書は14世紀に発見されたというのですから、その発現には神話的かつ伝説的なイメージを個人的には感じます。

そんなチベットの死者の書は、死後のガイドブックとして迷わないよう死者に49日間語りかけるお経。それによると、人は死ぬと、パルト=中有と呼ばれる状態に入ると言われています。そこでは、強烈な音や光、光線を体験。あるいは、寂静尊と憤怒尊の神々が現れてくると言われています。そしてその過程において、六道の世界に導かれてしまう、いわゆる六道輪輪廻です。来世の世界が決まってしまう、その過程において死者をできるだけ助けようというのが、死者の書ということです。

ちなみに、チベット死者の書は、心理学者としてLSDに関する研究やサイケデリック文化に多大な影響を与え、ニューエイジ運動においても理論的リーダーだったティモシー・リアリーにも影響を与えています。リアリーはチベットの死者の書に魅せられ、それを自我、意識の再生のツールとしてワークショップに応用、書籍化もしています。面白いエピソードとして、ビートルズの「トゥモロー・ネバー・ノウズ」という曲は、ジョン・レノンがLSDでハイの状態になっている時に、ティモシー・リアリーの「チベットの死者の書」を読み、インスピレーションで生まれたものという話もあります。

ティモシー・リアリーのチベット死者の書、表紙にはサイケデリック・バージョンと書かかれています。

もう一つ注目すべきは、映画「キル・ビル」をはじめ様々な映画に主演している女優のユサ・サーマンですが、彼女のお父様は実は、コロンビア大学のチベット仏教の教授とのこと。知的な家庭に生まれた彼女なんですね。その父、ロバート・A・F・サーマン教授によるチベットの死者の書の解説本。教授はゲルク派で欧米人として初めて得度を受けた方の様です。けっこう分厚い本なのですが、 まだこちらは読み始めたばかりなのですが、その、1ページ、1ページの解説がわかりやすく、そして、人生のことについて言及しているので心にしみることが書かれてあり、なかなか読み応えがあるんじゃないのかなと思っている本。

まら読み始めたばかりの本、仏教の根本的なことが最初の方は書かれており、人生の勉強になります。

それともう一冊、学研から出ているゲルク派版チベット死者の書です。こちらは積読状態で手をつけてはおりません。ゲルク派というのはチベット密教には流れがあって各種の派があります。ゲルク派はあのダライ・ラマがいる派。日本で知られているチベットの死者の書はニンマ派のもの。ニンマ派とは古来のチベットの宗教ボン教との結びつきが一番強いと言われています。ゲルク派の死者の書はやや内容が異なるみたいです(まだ読んでいないので)。過去にNHKが流し、死者の書であるパルト・トドゥエルとはニンマ派による死者の書です。ゲルク派のものとニンマ派のものを読み比べてみるのもいいかもしれません。

実はまだ読んでおりませんが、少しだけニンマ派のそれとは違うみたいです。前書きに書いていありました。

ニンマ派。ゲルク派というチベット密教の派が出てきましたが、なぜニンマ派の死者の書は日本ではよく知られたものとなったかというと、過去においてNHKの番組を監修したのが、宗教学者で’80年代のその昔、ニューアカとして一世を風靡した中沢新一氏なのですが、中沢氏はニンマ派の師についたからと言えそうです。

その中沢氏がチベットで師事した同じ師に、ついたのが牧野宗永氏という方。牧野氏は五体投地10万回、瞑想10万回と、聞くだけでそんなことできるのかと思える過酷な修行をされて、師から口伝でチベット密教の奥義を教わったそうです。はじめ五体投地を10万回やったと聞いたときは、ほんとにそんなことをやるのか?とびっくりしたのですが、チベット僧はあたり前なこととして前行をやるみたいですね。

その牧野宗永氏に、チベット密教の死生観を語っていただきました。様々な死生観を集めたオンライン配信コンテンツ「聖なる次元へ~様々な死生観を巡って~」に含まれています。牧野氏はネパールから帰国後、仏教コミュニケーターとして活躍され、今回もわかりやすくその話をしていただきました。その話から一部を抜粋し公開します。

死んだらどうなるのか?ほんとに謎ですね。チベットの死者の書も含めたワールドワイドな感じで死生観を考えてみました

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