「異界」を独創的に表現、その世界観を展示した「諸星大二郎展」

「諸星大二郎展 異界への扉」(三鷹市美術ギャラリー)

三鷹市美術ギャラリーで開催中の「諸星大二郎展 異界への扉」(10/10まで)は、天才漫画家・諸星大二郎の世界を7つのキーワードによるくくりで分け、原画と説明、それにかかわる実物の展示もあるという構成になっており、かなり見どころのある展覧会でした。

 ◎日常/非日常 異界への扉
◎民俗学/人類学/考古学 再構築された「異界」
◎日本の神話/伝説/文学 深淵にして身近な「異界」
◎中国の神話/伝説/文学 長大な歴史の「異界」を描く
◎西洋の神話/伝説/文学 異界の西洋ーもうひとつのナラティブ
◎博物誌/書誌 諸星的「異界」の体系化
◎アート 異界の扉の鍵

最近、諸橋大二郎の漫画を読みはじめ、頭を打ちぬかれたような驚きをえたのですが、デビューから現在に至る作品群を並べると氏が、どんどんと諸星流の異界へと通じていく世界を広げ、かつ、深めていっているのがわかるし、尽きることない知識の引き出しも見え隠れし、この貪欲な知識欲はどこからくるんだろうかと。

ち密な漫画を描く作業はそれが基本なのであるとして(それだけでも選ばれた才能と大変な作業なのですが)、読み手を面白くさせるためのベースにある物語の構成力、この神話とあの神話が組み合わさり、それが過去の遺跡と重なってくる、それは異次元の異界への扉を開くトリガーであるのですが、そこになるほどと思わせる説得力ある知識、情報の後ろ盾が必要になると思うので、それはそれはすごい才能だなと感じるのです。

諸星の漫画を見ていると古事記や日本書紀にでてくる神様を読み替えていき、実際の遺跡や縄文土器といったものなどに結び付けていくのですが、えの絵の構図に日本や西洋絵画の有名な絵の構図をそのまま漫画に書き換えているものもあり、それを今回の展覧会でわかり面白いなと思いました。

とにかく諸星の漫画は神話や民俗などが実際の遺跡などと飛躍的な想像力で結びつき、いかにもそんな展開が見えない部分であるのかもしれないというロマンが生まれ、知的な好奇心を大いに刺激をするのです。

ところでこの展覧会のカタログに著名な宗教学者だる鎌田東二氏が寄稿しており、諸星大二郎を「異形の神智学者」と評しています。神智学とは不可視の霊的叡智を新しい神智として再構築した運動であり、諸星は表の正統派ではなく裏のダークサイドな面にもスポットを孤独な独創的な探求と表現をしているとして「異形の神智学者」と評しているのでした。言い得て妙といえるかもしれません。

Follow me!