出版界の風雲児は、荒ぶる魂を持つ男
『わが闘争』角川春樹(ハルキ文庫)
私の中で、異色の経営者といえば何人か思い浮かびます。
見えない世界にスポットを当てた舩井幸雄もその一人ですが、私が10歳代後半から20歳代前半の多感な時期に現れた2人の経営者は、ひときわ異彩な光を放って私の記憶に残っています。
一人は、「不思議大好き」「おいしい生活」のコピー文で徹底したイメージ戦略で一時代を築いた今は亡きセゾングループを率いた堤清二氏。
そしてもう一人は、メディアミックス戦略で出版革命を起こし、角川映画という一ジャンルまで作った角川春樹氏です。薬師丸ひろ子も原田知世も角川氏がいなかったら活躍していなかった。度々、映画やドラマとなる横溝正史もここまで注目をされなかったでしょう。
書店でその角川春樹氏の「わが闘争」というヒットラーの書物のタイトルにひッかけた 物々しい本を見かけた時、 思わず購入してしまいましたが、しばらく手を付けることなく積読状態でした。
忘れ去っていた時本棚の整理でそれを手にした本の内容は、過激でした。やはり時代の寵児、カリスマと呼ばれ、ビジネスにおけるひとつの革命を成しえた男の人生観は他を寄せつけないほどのものでした。
自らを荒ぶる魂=スサノオの魂を持つものとし、人生をゲームととらえ、UFOとコンタクトし神がかりな姿勢で臨む、「生涯不良」を標榜する角川氏。俺は天才なのだと自らのたまう。弟との確執で角川書店を追放され、さらに、二年以上の獄中生活やがんの闘病までも経験した男。変人?と言ってしまえばそれで終わる。彼は出版界の風雲児なのです。
角川氏はその過激な姿勢で敵が多かったようなのですが、彼が出版ビジネスに与えた功績は燦然と輝き、今では定石のようになっているのも事実。
角川氏の本を読んで思うこと、彼のような個性が活かされ成長していた70~80年代は、まだまだ日本は活気にあふれ、イケイケのいい時代だったということ。これからの日本、未来はどんな個性を持った破天荒な経営者が登場してくるんだろう。型破りな経営者が出てくると世の中が活性化するので楽しみです。
わが闘争 (ハルキ文庫)