光と影が彩なす宿命の女に翻弄され陶酔する男性の物語

映画「ヘカテ」(1982年)

■製作年:1982年
■監督:ダニエル・シュミット
■出演ローレン・ハットン、ベルナール・ジロドー、他

映画「ヘカテ」が再公開されています。スイスの映画監督ダニエル・シュミット、ミニシアターがブームの頃にとても話題になった監督です。

題名のヘカテとはギリシャ神話に出てくる女神。ただその女神は冥界と結びつき、夜、魔術、妖怪を支配する暗黒面の神。映画は一人の謎めいた女性に惹かれ、嫉妬に狂い身を落としていく男が描かれています。

一体、ダニエル・シュミットの映画が人を惹き付けるのは何か?

映画は見方によれば、アフリカのどこかのアラブの国で女に溺れていく男の話を描いたわけだけど、そこに変化があるわけでもなく、ただただのめり込んでいく様を描いているだけだ。だからこの映画、どこがいいの?ってなる可能性もあり得ます。

実際、それは紙一重であるかもしれない。退屈して寝てしまう客もいるだろう、逆に、スクリーンに映し出される映像美の世界に酔いしれる客もいるだろう。

「ヘカテ」の魅力はあるリズムによって飽きずに見ることができるのは、女に陶酔していく様を美しく目眩くような映像で見せているから。男の揺れ動く心象が背景の映像と同化しているから、だと思うのです。光と影、謎めいた言葉、アラブの音楽・・・それらが自我を揺さぶる。大胆かつ繊細に、そして美しく。映画評論の大家・蓮見重彦が「もっとも心に浸みる忘れがたいラブシーン」と評している有名なバルコニーの場面。シュミット監督は男にとってはヘカテと言える魔性の女、ファムファタールとしての女性を、他の映画では表現されないような映像で魅力的に描いているからだと。

それともうひとつの魅力はファムファタールとしての女性を演じた女優ローレン・ハットンの大人の色気、美しさを漂わせる魅力もあると思います。

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