少女が背負った不幸な歴史と信仰の世界
映画「イーダ」(2013年)
■製作年:2013年
■監督:パヴェウ・パヴリコフスキ
■出演:アガタ・チュシェブホフスカ、アガタ・クレシャ、他
孤児として修道院で育てられた18歳の少女が主人公。唯一の肉親である叔母に会うようにと言われ、訪問すると本名がイーダであること、そしてユダヤ人であることを知らされます。彼女の両親の墓はなく、どこに埋められているかもわからないと。
イーダと叔母は、自らの出自を確かめる旅に出ます。イーダは修道院で育ち、叔母は判事という職に就きながら自由奔放の生活、その対比が面白いのですが、叔母のやけっぱちなスタイルの根底には自分の息子が殺されていたことからきているのだろうということが暗示されています。
結局、イーダの両親、そして叔母の息子は殺されており、森の中で埋められていた骨を探し出すのですが、ポーランドにおけるユダヤ人の暗い歴史をホロコーストがあったくらいしか、わかっていない私には、残念ながらこのことの歴史的な重みによる悲劇を実感し得ませんでした。その歴史を知っていればもっと違った感覚で受け止めることができたのでしょうが・・・。
なので想像するしかないのですが、もし私が厳格な宗教施設で育ち、青年期になった時に別の民族で本当の名前は違うと言われ、そこには阿鼻叫喚があったであろう流れの中で両親や親族が殺され森に埋められたということを知ったとしたら?私はそれをどう受け止めるのだろうか?
自分自身の持つ悲しい歴史を知ったイーダは、俗世間の楽しみを一瞬、味わいながら再び修道院へと戻っていきます。修道院へ歩んでいく彼女を真正面からカメラは捉え、映画は終わります。このシーンはいろいろ考えさせられる場面でした。この全編モノクロ映像の「イーダ」は評価が髙いようで、日本では「ポーランド映画祭」で上映され、評価も高く一般公開され、翌年にはポーランドで初めてアカデミー外国語賞を受賞した作品とのことです。