人と水の妖精の幻想的異類婚が切なく悲しい

「水の精(ウンディーネ)」フーケ著(訳:識名章喜)

まだ見てはおりませんが、現在公開中の映画「水を抱く女」の原作になっているのが、1811年に書かれたフーケの短編小説「水の精(ウンディーネ)」。映画をみる前に読んでみたくなり本を手に取りました。

タイトルにあるウンディーネとは、四大精霊のうち、水を司る精霊であると。フランスではオンディーヌとなり、こちらの呼び名の方が知られているかもしれません。

原作のフーケの小説は、この水の精霊のウンディーネと騎士フルトブラントとのメルヘンッチックな悲しい愛の物語でした。

妖精と人間との異類婚の幻想的な物語。

読んでいるとウンディーネの一途な気持ちが伝わり愛おしくなってきます。結局、異類婚なのでそれは叶わぬもの、しかし、悲劇的な結末も含め、胸がキュッと締め付けられるような感じになります。

男と女は、求め合い助け合うも、すれ違い誤解する、ああ、なんて生きるとは切なくも狂おしいのか。

60歳も過ぎたおっさんが、美しい水の精の純粋でひたむきな想いに目頭が熱くなります。そんなこと、いい歳して気持ち悪い、といえばそうかもしれません。でも私としては、とても新鮮な感覚で本を読むことができたのです。心が洗われるような感じ。

フーケの物語のベースになっているのが中世の錬金術師・神秘家パラケルススによるそうで。ウンディーネには、本来「魂」というものはないといいます。しかし、人間の男性と結婚すると〈魂〉を得ることになる。それはフルトブラントと恋愛関係になる前と以前では、 ウンディーネ が全く別人のように描かれていることからもわかります。

この〈魂〉というものが、男女を引き付け合い、愛し合い、憎しみ合う根本原理なのかもしれません。大体、好きになるというのは理屈ではなく、訳もなく雷のように降りてくるのですから。

この二人、もともと禁じられた婚姻なので、破綻の未来は見えてくるのですが、他の女性と結婚してしまった夫になったフルトブラントを、ウンディーネは妖精の掟として、殺さねばならない運命となります。その運命を受け入れるフルトブラント、悲しみにふけるウンディーネが切ない・・・。

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