魔術的リアリズムを纏ったメキシコの不思議な映画
映画「闇のあとの光」(2012年)
■製作年:2012年
■監督:カルロス・レイガダス
■出演:アドルフォ・ヒメネス・カストロ、ナタリア・アセベト、他
手元に公開当時の映画のチラシがあります。なんと書かれているのかというと
「雷鳴轟くマジックアワーの驚異的な大自然のイメージと、画面をおおう万華鏡的なビジュアルエフェクト。圧倒的な映像美でラテン・アメリカ特有の魔術的リアリズムをスクリーンに刻んでゆく。」とある。
監督はメキシコのカルロス・レイガダス、近年注目の人らしい。国際的な評価も高い。
さらにキャッチコピーとして
「悪魔」なのか、それとも「神」なのか?
とある。一体どんな映画だろうと見てみたのですが、とても不思議な映画。見ようによっては、つまらない惰性の映画とも言えるし、一方では映像自体に不思議なパワーを感じる幻想的とも言える傑作とも。賛否両論が多い映画なのだ、ということははっきりしています。思うにこの映画は、アートとしての映像という要素が強い、そこにはエンターテイメントとしての要素が後ろに引っ込んでいるという感じなのです。
この映画は日常のさりげない様子を描いているようでも、常に不穏な空気が流れています。この空気感を出すのはけっこう凄いと思います。そして決定的なのは、全身真っ赤な悪魔のような姿をした聖霊のようなものが描かれること。
悪魔か神か、とキャッチコピーにはあるけれど造形的には伝統的な悪魔の姿。しかし、悪魔というにはどこかユーモラス。おまけに明らかに男と思われる性器のようなものもわかります。印象は漫画的と言えます。
聖霊なのか、なんなのか?一切の説明がないのですが、それが突然出てきた時は、あっという声が出たし、それにより不穏な空気観をより一層際立たしたことは間違いないです。「聖なるもの」とは何か?そうした感覚に一石を投じた映画のようにも感じます。
2012年のカンヌ国際映画祭で監督賞を受賞している作品。