人類の知的進化の鍵?モノリスを巡って

「2021年宇宙の旅モノリス_ウィルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」展 とその周辺の思考

原宿駅、駅が改装され街も少し雰囲気が違ったのでびっくりしました(笑)原宿のお洒落な商業ビルのギャラリーで開催されている「2021年宇宙の旅モノリス_ウィルスとしての記憶、そしてニュー・ダーク・エイジの彼方へ」展を観てきました。ちなみにお洒落な商業ビル、何も買わずに帰ったのですが(笑)

お洒落な商業ビル「GYRE」

展示のタイトルには2021年とあるが、「モノリス」といえば映画史上に残る傑作、1968年に公開されたスタンリー・キューブリック監督による「2001年宇宙の旅」に登場するあの「モノリス」なのです。人類と知性、テクノロジー、進化をテーマとしたSF映画の金字塔です。

映画では猿人が忽然と現れた黒い石板「モノリス」に恐る恐る触れたことで、道具=骨を手にして知性を得え、雄たけびをあげ宙に舞った骨が宇宙船になる場面は、まさに映画史に残る名場面です。そして人間は宇宙に行くことになり、月に出現したモノリスの謎を探るべく木星へと探査。やがて二とはスターチャイルドヘと進化する・・・。そして哲学者ニーチェの「ツァラストゥラはかく語りき」がテーマのシュトラウスの交響曲により超人というキーワードが付加されたことにより、さらに知的な刺激をかきたてていきました。モノリスとは?地球外生命体なのか?そうした問いかけが謎が謎をよんでいきました。

この展覧会ではSF小説家のアーサー・C・クラークと映画監督スタンリー・キューブリックが生み出した傑作「2021年宇宙の旅」のモノリスをベースに、宇宙旅行、AIの反乱、非人間的な知性、人工的な進化といった現在の諸問題に対してアーティストがその作品により問いかけたもの。入り口にモノリスを配し、現代美術作家らの作品が並びます。ただ、現代美術なのでひとつひとつの作品が難解であるというのは否めません(笑)

ところで、先日、NHKでその「2001年宇宙の旅」をテーマとした番組が流れていました。そこではこの映画を生み出したクラークとキューブリックの対立が説明されていました。モノリスについてクラークは説明すべし、しかし、キューブリックはそんなことをしたらだいなしになると。クラークはその著書から「モノリスから、人間を人含む多くの種族が誕生したのだ」と説明、つまり、地球外生命の目的はモノリスの超常的な力により肉体を持った生命体を精神のみの生命体へと進化させること・・・と。しかし、キューブリックはそうした説明は排除しイメージとしてモノリスという石板を置きサイケデリックな映像を流したのだった。結果、公開時は難解で出ていく客もいたようだったものの、数日後、斬新な映画として若者から絶大な評価と指示を得ることになる。

同じくその番組でキューブリックは、モノリスを進化の鍵として描きたかったので、そこには相当こだわったといいます。 美術監督のマスターズが大変な思いをしたとか。実はモノリスの初期のデザインは、イラストが残っていてピラミッド形だったという。さらに、キューブリックはそれを透明にしたいと言うが、アクリル板ではピラミッド形にするのが無理で、煙草ケースのような四角形の板にというマスターズの提案により、モノリスは透明な四角い板となった。

NHKのTV画面より

果たしてそれができた時、どうだったのか?キューブリックは透明なのでこれでは見えない!と。やり直しとなり、マスターズは黒い板にしたという。キューブリックのこだわりに対してマスターズは職人魂を見せ、14枚ものモノリスを作ったといいます。こうして、あの「2001年宇宙の旅」を象徴するモノリスができた。モノリスは人智を超えたミステリアスな雰囲気を持つ不思議な存在となったのです。

このモノリスですが世界の不思議現象を扱う月刊誌「ムー」の2月号に、アメリカのユタ州の砂漠で2020年11月に銀色に光る三角柱の柱が見つかって大騒ぎとなったと紹介されています。しかしそれが直ぐに撤去されたとか。グーグルアースで調べるとこのモノリスは2015~16年の間に建てられたものだといいます。しかし撤去後、このモノリスに呼応するかのように、ルーマニア、オランダ、イギリス、コロンビア、ベルギー、フィンランドといった世界各地にモノリスが出現したそうです。これらの騒ぎは現代美術家によるものだということらしいのですが・・・。

2021年2月号月刊誌「ムー」の記事

モノリス、それは人の進化の謎を巡る大いなる創造力の賜物。キューブリックが生み出した映画が50年を経ても色褪せず影響を与えていることに驚きを感じずにはいられません。私もキューブリックの影響でニーチェの書物に手を出してみたり、あるいは、シュトラウスの音楽に惹かれオペラ「サロメ」の世界へと導かれていったのですから・・・。

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