物語の力は人生を何倍にもするのだ

『秘伝「書く」技術』夢枕獏(集英社文庫)

小説家・夢枕獏氏の「『秘伝「書く」技術』を読んでいると、いろいろな発見がありました。

30年以上にわたって「陰陽師」はじめ、ベストセラー小説を生み出してきた夢枕氏が、アイデアが出ない時、最終的にはとにかく書き始めることなのだといいます。一行書くことにより、そのセンテンスから次の展開が生まれ、それを受けて次の文章が生まれてくる・・・。それはとても素敵なことなのだとも。

作家にとって、書くことは行動すること。この本にはアイデアを生み出す方法も書かれているけれど、最終的には書くこと=行動すること、なのだといいます。この行動することというのは、とても大切なんだなと思います。様々な知恵者による人生の扉を開いていくコツについての本に書かれていること、行動するせよ。行動しない限り状況は変化しない。

彼にとっては書くことが現場、そこで死ぬことができれば理想だと書いてありました。

夢枕氏は、本の中で、人間には物語を作る能力があり、それは生存していくためだ。文字がない時代にも人は物語を紡いでいた。そして、人間がここまで発達し得たのは物語を作る能力があったからだと。

ところで話が飛ぶのですが、ロックミュージシャンで大成功した一人に矢沢永吉氏がいます。彼の特徴としてインタビューなどを見ていると自分自身を「矢沢」と呼び、まるで第三者を語るかのように話します。私は夢枕獏氏の本を読んでいて、矢沢永吉氏の大成功の要因の一つに、自身を物語の主人公に置き換えることができたからなのでは?と思ったりしました。

矢沢永吉氏は、自身が生み出した神話の英雄譚を生きている、そんな風に思えました。物語とはもしかしたら、私が想像している以上のパワーがあるかもしれません。映画「スターウォーズ」が何十年もの間世界中から愛されたのも物語の力、無視できないパワーです。

ちなみに、象形文字としての漢字。象形文字は物語的要素を含んだ文字。夢枕獏氏は日本人は物語=漢字に囲まれた豊穣な世界を生きている民族と書いており、もしかしたら、世界に類を見ない日本の独特のな感覚は、漢字を多様する文化にあるのかもしれないと想像を膨らましたのでした…。

<本書での気づき>

★やる気があるからやるのではなく、「やる」から「やる気」がでる⇒まずは始めることが大切。行動するからやる気もでてくる

アイデアがあるから書くのではない、書かなくていけないからアイデアがでる⇒必要に迫られるからアイデアがでてくる、つまり「やる=行動」ということが大切

ファンタジーを支えているのはリアルな肉体、リアルな肉体なくしてファンタジーは成立しない⇒プロレス観戦からの知恵、リアルの重要性

翼を借りて飛んではダメだ、自分の力で飛ぶ⇒バカボンドの成功は宮本武蔵としなかったことから、オリジナリティと自力があれば、成功すればそれはゆるぎないものとなる

スランプも一生書いていく道の途中の風景の一部でしかない⇒いい時も、悪い時も俯瞰してみると乗り越えていける

自分の殻を破るには、外の力を借りる必要がある⇒外圧があってこそ、自分を見ることができるし、刺激を受け興奮もし、動いてみようという気になる。人は平穏でいると動かなくなる。

秘伝「書く」技術 (集英社文庫)

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