私が心躍らせた怪獣映画は、昭和の‟ガメラ”。

今年(2021年)に還暦となった私です。振り返ると人生は長いようで短い、短いようで長い。人生100年時代、まだまだこれからと鼻息が荒い?私ですが、振り返ることも多くなりました。私の子供の頃は、ウルトラマンといった怪獣ものに大きく影響を受けた世代です。その中で、映画館の大スクリーンで見る怪獣映画は、また違った意味で、子供の私の無意識部分に影響を与えたように思います。

その映画館で初めて見た怪獣映画は「ガメラ」でした。以後、私は怪獣といえば、ゴジラではなくガメラびいきとなっていくのです。キング・オブ・モンスターといえばゴジラであり、キング・コング、その両雄が闘うアメリカ映画「ゴジラ対キングコング」が今年の5月に封切られるようですが、やはり、私にとってのキング・オブ・モンスターは「ガメラ」なのです。

ということで、私が子供時代に影響を受けた昭和のガメラにスポットをあててみました。

「大怪獣ガメラ」(1965年)

■製作年:1965年
■監督:湯浅憲明
■出演:船越英二、霧立はるみ、山下洵一郎、他

私の大スクリーンでの初めての怪獣映画体験といえば「ガメラ」です。子供の頃、母親に連れられて観に行ったのが「大魔神」と2本立上映しされていた「ガメラ対バルゴン」、これが人生初の怪獣映画体験。なぜゴジラではなくガメラなのか?それはボクがまだ5歳で、詳しくは知る由もないが恐らくは家の近所の映画館が大映系の映画館であったこと、そんな理由であろうと思う。とにもかくにも子供であったボクには映画の選択権はなく、それ以後の怪獣映画といえば、私にとってはガメラなのです。

しかし、ガメラの記念すべき第一作はずっと観ることがありませんでした。大人になってガメラがどうやってスクリーンに登場したのかがわかりました。ガメラの出自は、謎の大陸アトランティスに生息した巨大な亀、米ソ冷戦のあおりを受けて原爆のショックで北極の海で甦りました。たしかゴジラも原爆か水爆の影響を受けていたような・・・当時の世相を反映しているのと、巨大な怪獣が蘇るには原子力のパワーが必要と言うこと。

大人が忌み嫌うガメラも第一作目から子供の味方的な描かれ方をしておりましたが、終盤ガメラを追いかけてきた少年は、ガメラ排除最後の策、地球規模でのグローバルな秘密基地(Z作戦)の魅力の虜になりガメラを思う気持ちはどこかに飛んでしまい、ロケットにガメラを封じ込め火星にふっ飛ばした時は一緒に喜んでいました。何やら急に物語の進行のテイストが変わってしまい、あっけなくラストになってしまい。ちょっとだけガメラが間抜けに見えてしまいました。

「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」(1996年)

■製作年:1996年
■監督:田中重雄
■出演:本郷功次郎、江波杏子、夏木 章

ガメラ対バルゴン、この映画こそが、私が5歳のときに始めて映画館で観た怪獣映画です。当然、5歳の子供なので詳しい部分のストーリーなどは理解できないし、またよくは憶えていません。が、その中でも大画面で繰り広げられる怪獣同士の戦いで、薄らと記憶しているシーンがあります。それはバルゴンが孵化するシーン、そしてバルゴンの背中から発せられる虹のような光線、そしてガメラの攻撃によってバルゴンの頬から紫の血を流すシーンです。いずれのシーンも幻想的で、しかもリアルに描かれていました。子供心ながら神秘的な表現に惹かれるものがあったのでしょう。

そして気がついたことは、怪獣映画でバルゴンのようなトカゲ系の姿をした怪獣はあまりいなかったんじゃないかということ。横長の姿の怪獣なので、のっしのっしと画面を横断していくような構図がとられており、それがスペクタルな印象を与え、妙に重厚感を出していました。

それとユニークなのはバルゴンは誤って水虫退治用の赤外線が当ってしまい発育が促進さてた畸形であるということ。水虫というのがなんとも・・・笑えます。また、この映画には子供が登場せず子供の味方としてのガメラの特徴はありませんが、ガメラの立場は変わり人類には害を与えない存在になっています。

「大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス」(1967年)

■製作年:1967年
■監督:湯浅憲明
■出演:本郷功次郎、上田吉二郎、笠原玲子、安部尚之

“ギャオ”と鳴くからギャオスと言うんだよと政府の要人たちは子供に押し切られます。バルゴンからうって変わって「ガメラ対ギャオス」からは子供がメインとなっていきます。このギャオス、ガメラ映画の中でも人気No.1の怪獣で昭和、平成ガメラシリーズを通じて何度も登場することとなります。それだけこのギャオスはインパクトや造形、性格など成功したキャラクターとなり得たのです。

ベースは吸血コウモリでしょう。光に弱く闇をマントを拡げたドラキュラの如く飛行する。口からは切れ味も鋭い超音波光線を発します。(それにやられたガメラの血は緑であった!)そして、造形ははっきりいって三角形を基本に形づくられています。(三角形の組み合わせでギャオスは完成する)性格も吸血鬼のような味付けがしてあることで邪悪性も増し、正義の味方であるガメラとの対立の構図がはっきりしています。そういった要素の中で、私もガメラといえばギャオスが一緒に思い浮かぶくらい印象深い怪獣キャラクターです。

第3作目にしてガメラの歌もできて名実共に子供達のヒローとして受け入れられていったのでしょう。(よく知られた歌ではありませんが・・・、多分)

「ガメラ対宇宙怪獣バイラス」(1968年)

■製作年:1968年
■監督:湯浅憲明
■出演:本郷功次郎、高塚徹、カール・クレイグ・ジュニ、他

第3作目にしてその地位を確立したガメラ。第4作目は地球外生命体との対決となります。冒頭にガメラは地球征服を狙うバイラスの宇宙船を襲います。ここでガメラは空気がない宇宙空間でも平気なの?なんて疑問も生まれてくえうわけですが・・・。

ガメラはこの映画において地球の守護神的な働きを見せます。そしてすっかり子供の見方となったガメラ、子供達はアメリカ人も登場し国際的になります。そしてバイラスはガメラをコントロールし都市を破壊させるのですが、ここでは予算の削減なのでしょうか、過去の映像を使用、ちょっと興ざめです。つまり、怪獣が決闘する場面は海辺と、特撮のミニチュアセットも簡易性が目立つ(^^;

イカを模したと思われるバイラスはとても宇宙船を作ったようには見えない知的生命体なのですが、そのやりのような尖った頭で、ガメラの腹部を串刺しにします。ガメラ、ピンチ。この辺りからガメラは、対する怪獣に瀕死の状態に追いやられるという、亀を模したゆえの弱さというか哀愁を漂わせるようになります。それがまた判官びいきというか、ガメラの魅力のひとつなのですが。

「ガメラ対大悪獣ギロン」(1969年)

■製作年:1969年
■監督:湯浅憲明
■出演:加島信博、秋山みゆき、クリストファ・マーフィー他

宇宙からの外敵バイラスを倒したガメラは、本作品で宇宙空間へと飛び出し活躍します。なんと、子供の味方は2人の少年を助けるべく動くのだ。地球に不時着したUFOに好奇心で乗り込んだ少年は、宇宙人に誘導されて太陽を挟んで地球と同じ軌道の正反対にあるにある星「テラ」へと連れていかれます。(テラとは地球の別名だったような)ということで、この星の環境は地球と同じ空気もある。太陽の真裏にあり軌道も同じなため地球はその星の存在を知る由もない、この理論は子供心にもなるほどと思った記憶があります。(哲学者プラトンによる遊星「アンティクトヌス」、あるいは 、反地球クラリオン??)

そしてその星にはmなんとギャオスがいた!しかし、まるで包丁そのものの怪獣ギロンにいとも簡単にやられてしまいます。ガメラの好敵手であったギャオスが、軽くやられてしまうなんて!そこから類推されるのが、ガメラの最大のピンチにさらされているということ。とにかくギロンは強いのだと。ガメラはどう立ち向かうのか、そんな不安がよぎります。

が、その戦いはガメラが大車輪を見せたりと子供向けサービスが先行しリアリティがありません。水中でも火炎噴射が可能なのです。少年たちとも連携プレーでギロンをかろうじてやっけることができましたが、地球に帰還するため、ギロンによって真っ二つに割れたUFOをガメラは火炎噴射で溶接し、そこに子供を乗せてガメラの歌に乗って宇宙空間へと飛び出します。子供のときは余り疑問に思いませんでしたが、今観るとけっこうハチャメチャなストーリーでした。

「ガメラ対大魔獣ジャイガー」(1970年)

■製作年:1970年
■監督:湯浅憲明
■出演:高桑勉、ケリー・バリス、キャサリン・マーフィ、大村崑

このガメラは、戦後日本の高度成長におけるエポックの一つとなった万国博覧会をその舞台としています。開催における目玉としてウェスター島(イースター島を捩った?)の石像を展示しようとして、封じ込められていたジャイガーを復活させてしまう話となっています。ジャイガーはムー帝国伝説の怪獣というふれ込みで、一方のガメラは第一作によると謎の大陸アトランティスに生息した巨大な亀とされており、ムー対アトランティスの謎の古代大陸代理戦争の様相です。

ジャイガーが強いのか、ガメラが弱いのか。強いぞガメラ♪の歌とは裏腹にガメラはジャイガーとのその戦いで1戦目はひっくり返されて負け、2戦目は幼虫をうえつけられ貧血状態に陥り、これまた負け。そこで立ち上がる子供達、映画「ミクロの決死圏」よろしく、ガメラの体内へと潜入し幼虫ジャイガーを倒し瀕死状態のガメラを救います。かつて子供達を助けたガメラは今回は逆に助けられます。(しかし、幼虫ジャイガーといえども大きさからするとライオン級なわけで・・・、子供たちの勇敢さは賞賛に価しますね)

当時、ジャイガーによって幼虫を植えつけられガメラが白くスケルトン状態になってしまったのは、子供心にゾッとした記憶があります。怪獣がその内部から崩壊してゆくというそのストーリーは、他ではあまり知りません。ジャイガーは強い、そんな印象があります。ガメラ映画は回を増すごとに敵対する怪獣がどんどんと強くなってきて、一体この先どうなちゃうんだろうと思いながら、私はこの映画を最後にガメラ映画から卒業をしていったのであります。

ちなみに、もう一つの主人公である子供達ですが、ギロンの時は日本人の兄弟(兄・妹)と外国人の子供の3人組でしたが、ジャイガーでは外国人の兄弟(兄・妹)と日本人の子供の3人組と対照的な構造になっていました。

「ガメラ対深海怪獣ジグラ」(1971年)

■製作年:1971年
■監督:湯浅憲明
■出演:坂上也寸志、グロリア・ゾーナ、アーリン・ゾーナ、八並映子、他

このガメラ映画は地球環境問題が入っており、教育的な視点も盛り込まれています。美しい海、その環境を汚す人間に対して宇宙から侵入してきたジグラは警告的存在としても描かれています。今見ると突っ込みどころ満載のガメラ映画ですが、ジグラは水中で生息する怪獣、そのかれらがどうやって宇宙船なるものをあの形で作り得たのか?教えてくれーと叫びたくなります。

本編の映画の方といえば、これがいつものテイストとはやや趣が異なり、セクシー女優の八並映子が水着姿を披露したり(彼女を水着のまま車に乗せたときの、運転していた男の助平な視線、細かい演出みつけました)、深海で潜水艇が作動停止しその乗組員の行方は?というパニック映画的な要素があったりと枠外のテーマが盛り込まれていたりと、鴨川シーワールドというローカルな場所を舞台としながら、そこはジグラによって引き起こされた大地震によって壊滅状態となった日本の中枢・東京にとって変わって今や地球の行方を占う場所となっています。そこに陣取る一自衛官はジグラからの降伏要求に対して、降参と人類の代表として勝手に決断してしまいます。何と大胆なことを!

事実上の昭和のガメラ映画、最後の作品なのでありますが、影の主人公である子供達が被る野球帽、当時絶大なる強さを誇った巨人軍のマーク入りの帽子を被って登場したのは、この映画が始めてでした。何か理由があるんでしょうか。

「宇宙怪獣ガメラ」(1980年)

■製作年:1980年
■監督:湯浅憲明
■出演:マッハ文朱、小島八重子、小松蓉子、他

昭和ガメラの最後の作品は、過去の映像を寄せ集め怪獣達を次々と倒す最強ガメラでした。しかし、予算の都合かガメラ自身の目玉が動かなかったりと、ちゃっちさが気になります、というか気になりすぎる(# ゚Д゚)

ヒロインに元女子プロレスラーのマッハ文朱を起用、なんとなく観ていて悲しくなるガメラ映画。とりあえず過去の映像をくっつけ模型のようなガメラにもかかわらず、マッハ文朱はその運動神経を生かしたアクションを見せます。彼女の姿勢には感心、エライ!もうこれはギャグ映画とばかりに随所に当時話題となった話題のパロディも、ここまで安易にやられてしまうと心に隙間風が・・・。

Follow me!