ホモ・サピエンスの悲喜こもごもを描いた映画

映画「ホモ・サピエンスの涙」(2019年)

■製作年:2019年
■監督:ロイ・アンダーソン
■出演:マッティン・サーネル、タティアーナ・デローナイ、アンデシュ・ヘルストロム、他

スウェーデン映画界の巨匠とされているのがロイ・アンダーソン監督。「ホモ・サピエンスの涙」という何やら意味深なタイトルと映画のチラシに抱き合いながら中年の男女が空に浮かんでいるかのような ビジュアルがありました。どんな映画なんだろう?直感的に見てみたいと思いました。

見てみると最初に想像していたものと全くちがうものでした。ひとつひとつの何気ないシーンを丁寧に、しかし、シニカルに描いている映像の羅列。一編の夢、映像詩といってもいいようなものでした。

ないようである、あるようでない、そんな人生のワンシーンを切り取ってきてアンダーソン監督はそれを冷静な視点で見つめ、毒々しく、ユーモアを含み、やさしさの眼差しでそれらの映像を構築しているのでした。

なので全編を通しての明快なストリーはありません。あるのは不条理な人間=ホモ・サピエンスの断片的な描写。それがどの映像も晴れた日はなく、どんよりと曇っているものばかり。実に不思議な感覚にとらわれた映像でした。

アンダーソン監督は美術作品に影響を受けたらしく、チラシのメインビジュアルになっている宙を漂う中年の男女は、あのシャガールからだといいます。たしかにシャガールには宙を漂う人物が原色鮮やかに描かれています。しかし、アンダーソン監督はそれを色があまりないモノクロームに近い映像で、人を戦争で廃墟となった街の空に漂わせていた。

この「ホモ・サピエンスの涙」はヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受容している作品。センスに満ち溢れた映画だといえます。ただ、多少眠くなる映画でもありますが・・・。

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