戦時下、理不尽さを通じて成長する少年のワクワク映画

映画「ジョジョ・ラビット」(2019年)

■製作年:2019年
■監督:タイカ・ワイティティ
■出演:ローマン・グリフィン・デイビス、トーマンシー・マッケンジー、スカーレット・ヨハンソン、他

第二次世界大戦下を描いた「ジョジョ・ラビット」は、ヒットラー政権下のドイツの子供を主人公にした珍しい映画です。主人公のジョジョはナチス、ヒットラーに憧れ、背伸びする子供。世相を反映して意気がっているも、実は心優しく臆病。そのギャップがこの映画の独特な味わいを出しています。

トロント映画祭で観客賞を受賞したというくらいだから、観ていて面白いし、ドイツの少年の視点から描いた展開が新鮮でもあり、彼の気づきに心を動かされていきます。

主人公のジョジョは青少年の参加が法的に義務づけられたヒットラーユーゲントに所属し、ヒットラーを支えるべく教育されています。つまり、子供の頃から洗脳させるということで、全体主義の恐ろしさを感じます。映画ではジョジョの内なる声として幻としてヒットラーが出て会話をかわす。ナチスについて、ユダヤ人について心の中の会話をビジュアル化してみせます。

そこではユダヤ人は人ではない、駆逐すべき存在として教育される。しかしジョジョの母親は反政府運動の闘士であり、ユダヤ人女性をかくまっていた。それを偶然知り母親に内緒でその女性とコミュニケーションをとっていたジョジョは、歪んだ教育からだんだんとユダヤ人について本当の姿を知るようになる。

母親を演じたのは、スカーレット・ヨハンソンでその存在感が素晴らしかったし、ユダヤ人女性を演じたトーマンシー・マッケンジーもよかった。だらしない大尉で最後は絶妙な思いやりをみせたサム・ロックウェルのいい味を出していた。そして何よりも心の成長見せて行くジョジョを演じたローマン・グリフィン・デイビスが素晴らしい。天才子役、彼の演技なしではこの映画は成立し得なかったと言っても過言ではない。

ラストシーンは涙を誘う。ということで、この映画は観客賞受賞も充分頷けるオススメの一本です。

ジョジョ・ラビット (字幕版)

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