激動の歴史を辛辣に、そしてコミカルに描いた大傑作

映画「アンダーグラウンド」(1995年)

■製作年:1995年
■監督:エミール・クストリッツァ
■出演:ミキ・マノイロヴィッチ、ラザル・リストフスキーミリャナ・ヤコヴィッチ、他

第45回カンヌ国際映画祭(1995年)でパルムドールを受賞した映画「アンダーグラウンド」は、間違いなく大傑作でした。その揺るぎない評価(20世紀のベストテンに入るとの評判)だけは知っていたのですが、実際に見てみるとこれはすごい作品だと痛感させられました。監督はエミール・クストリッツァ、旧ユーゴスラビア現代史を風刺をこめて描いた映画です。

物語は、第二次世界大戦期、ナチスドイツがユーゴスラビアに侵攻。ベオグラードに住む武器商人のマルコは屋敷の地下に避難民たちを匿い、そこで武器を作らせて生活する。

一方、パルチザンのヒーローでマルコの親友であるクロは、マルコを信じ地下生活を続ける。やがて戦争はドイツの敗北で終結するもマルコは避難民たちにそのことを知らせず、彼らの地下生活は50年もの間続いていくことになる。ユーゴスラビアという国が亡くなってしまったことも知らず、地上は内戦状態に・・・。

滑稽と言えば滑稽な作り方をしている、だから、見ていて笑えるところも多々ある。見ようによってはまるで志村けんがいたドリフターズのドタバタ劇の様相なんだけど、映画に突き刺さっている芯は骨太なもの、それが陽気な笑いとともに流れています。

映画の冒頭と終わりはサーカスを連想させるような底抜けに明るい音楽が流れます。それはフェリーニの映画を連想させるような祝祭であり、円環構造。笑いと悲しみ、怒りと音楽、男と女、生と死・・・。すべてが混沌としごちゃ混ぜになり、想いを馳せるは我が祖国。何度もなり響くリリー・マルレーンの歌声が何故か虚しさを誘う。

印象的なのは結婚式でドレスを着た花嫁がまるで宙を舞っているような演出。その彼女も井戸に身を投げてしまう。英雄クロも、その息子も、水にまきこまれ亡くなっていく、まるで浄化されるように。

ラストシーンが、圧巻で魂の世界、あの世まで描いている。そこには許しのテーマと生を賛歌する音楽が流れる。「アンダーグランド」がこんなにすごい映画だったとは知りませんでした。

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