パンデミックを描いた奇才ソダーバーグの映画
映画「コンテイジョン」(2011年)
■製作年:2011年
■監督:スティーヴン・ソダーバーグ
■出演:マット・デイモン、ケイト・ウィンスレット、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウ、他
新型コロナ・ウィルスにより話題となっている映画「コンテイジョン」。私はこのパンディミックをテーマとした映画を監督したスティーヴン・ソダーバーグが好きで、劇場公開当時この「コンテイジョン」を映画館で見ていました。ソダーバーグの作る映画は知的で、かつ、実験精神にも富み、またエンターテイメントとしても面白い。
今回のこの騒動を受け、再び「コンテイジョン」を見てみました。そして、驚きました。公開当時はパンディミックの映画を見ていてもまったく他人事でほとんど忘却の彼方にあったということに気づかされたとともに、あまりにも今回の想像と似ていると思ったからです。
映画は生命を脅かす未知のウィルスが発生し、世界中に感染しパニックに陥るという話です。ソダーバーグはこの作品を世界的規模でビックスターを出演させながらも、ハリウッド大作映画のようには仕上げておらず、むしろミニシアター系とでもいうような小品に作り上げています。
そして、クラスターとかステイ・ホームとか手で顔をさわらないとか、マスコミで毎日のように流れている言葉が出てきたことから始まり、ウィルス感染の発生源を探っていく部分や、感染が爆発し人々がパニックとなり各種の規制が引かれたり、食料を確保するためにスーパーや民家を襲ったり部分に発展していく展開にゾッとする思いとなりました。
死が脅かされる非常事態になると、私たちは本能的にもエゴがむき出しになってくるという恐ろしさは、反面教師といえます。
この「コンテイジョン」では、映画ゆえに極端に描いていましたが、それはおそらくウィルス感染による致死率の問題と大きくかかわってくるんだろうなと。もし今日本を、世界を揺るがしている新型コロナ・ウィルスの致死率が数倍、数十倍高ければ、今のような自粛しようと呼びかける程度の状態にはなっていなかったのではないかと思えるのです。
この映画は2011年度の作品なので、フリー記者のブロガーがwebで信者を集めていく様子も描かれていたり、あるいは、先日の記事でも紹介したユバル・ノア・ハラリ氏が指摘していたような監視システムの導入の兆しも描かれています。たとえば、ワクチンが開発されるとそれがパニックにならないためにくじ引きで打つことができること、店舗に入るにはワクチンを打ち安心な市民であるとIDカードを見せることなど。果たしてその先の社会は?映画ではそこまでは描いていません。我々の想像力にゆだねられます。
公開時は面白いかどうかで見ていた「コンテイジョン」、しかし状況が変わり、わが身に起こったからこそリアルに感じることができた映画「コンテイジョン」、それはまるでシュミレーション映像のようでした。この映画を作るにあたりソダーバーグは相当な専門家をブレーンに付けたのでしょう。パンデミック、パニック、監視社会・・・様々なエゴと価値観がぶつかり合うあらためて考えさせられる映画でした。
コンテイジョン (字幕版)