脳が超覚醒し、メタモルフォーゼしていく女性

映画「ルーシー」(2014年)

■製作年:2014年
■監督:リュック・ベンソン
■出演:スカーレット・ヨハンソン、モーガン・フリーマン、チェ・ミンシク、他

人間の脳はわずか10%しか使っていないという。それがもし20%、50%、70%、果ては100%まで使うことができたら一体どうなるのか?このリュック・ベンソン監督による「ルーシー」は、そんなテーマに迫ったSF映画。この監督は独創的な人物を創造し、そこに個性的な演女優を割り当て、映画に独特の世界をもたらすのに長けた一人と言っていいですが、この映画もなかなかの配役で、脳力が覚醒していく女性を演じるのはスカーレット・ヨハンソン。顔立ちもキリッとした個性的でエキゾチックな魅力も充分な、勢いのある女優だ。彼女だからこそ、ハイテンションのまま映画を突っ走ることができたんだろうと思える好演。

話は単純で、韓国マフィアが覚醒物質を密輸するために、人間の体内にそれを袋に詰めたまま埋め込んでしまう手術を強引に施し、人とともに空輸させてしまおうというとんでもないことを謀っている。偶然、そのマフィアの計画に巻き込まれてしまうことになるルーシーという女性、強引に彼女の体内に埋め込む手術を施されてしまうが、覚醒物質が溶け出してしまい自らの脳が覚醒してしまう。脳の使われていない領域が拡大し脳力が覚醒していくルーシーは、次々と人間離れしたことが可能になり、彼女を追っかけてくるマフィアを軽々とやっつけてしまう。

聞こえないはずの人の会話が聞ける、体の痛みを感じないようにコントロールできる、彼女は電磁波などの見えない領域の波長帯が見える、想いで物質を動かすことができる、などが人間の脳力覚醒によってできることとして映画は描かれている。それがどの程度リアルな現象なのかは別として、自己を被っている障壁が外れていくと超常現象的なことが可能となるということは、例えば、気を自在に使うことができる、人が発しているオーラを見ることができる、霊的な存在と交信できる、などといった人達がいることを考えると、まんざらでもないのかもしれません。

ともかく、映画は脳力覚醒において生命史のような映像を重ね合わせていくため、見ていてテレンス・マリック監督の「ツリー・オブ・ライフ」や古くはケン・ラッセル監督の「アルタード・ステーツ」、スタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」などを想起させるのでした(ありがちと言えばありがちなのですが)。それは脳の覚醒を通しての、過去への回帰であれば、意識の起源への旅であり、未來への旅は意識の変容なのでした。

降りかかってきた災難から、超意識の旅をせざる得ない状況に追い込まれ最後は肉体まで崩壊させ別の次元へと変容していくルーシー。この特異な人生を送ることになってしまう女性をスカーレット・ヨハンソンは、変容する女性を実に見事に演じていたと思いました。リュック・ベンソンは、女優の新しい局面を引き出すのが上手い監督なのですね。クールな感じのヨハンソンがたまらなくカッコいい、この映画で彼女の魅力にくぎ付けです(笑)

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