勅使河原三郎ダンス公演★カフカ「変身」を観た!
世界的に活躍する著名なダンサー・勅使河原三郎。そのアトリエが、なんと家の近くにありました。勅使河原三郎のダンスは90年代、今はなき銀座セゾン劇場などで見たことがあります。その勅使河原は、そこで定期的にアトリエ公演をやっているようで、カフカの「変身」を題材にダンスを踊るという情報を得ました。
原作カフカ「変身」、演出・照明は勅使河原三郎、出演は勅使河原三郎、佐東利穂子。
真っ暗な空間にぼんやりと窓に差し込む朝日のような光、そして人の影。どこか、小さくもがくよう仕草、ある朝、グレゴール・ザムザは、虫になっていた。その違和感を表しているようだった。
そして、躍動的なダンス、グレゴールは、虫として部屋の中を自由に、這いずり回るのだ。ダンサーは勅使河原三郎と佐東利穂子の2名、私には、勅使河原がグレゴールの内面を、佐東が虫になってしまったグレゴールを表しているように感じた。
勅使河原は、壁にノックする。それは孤独に追い込まれ、世の中、家族と隔絶してしまい、絶対的孤独に追い込まれたグレゴールの内なる声か?
勅使河原は、ジャケットをいじる所作があった。カフカの作品は、誰にでもあるであろう弱い部分、しがらみから逃れたい、前に出る勇気がない、そんな弱さに気づかせてくれる作品だ。勅使河原のジャケットをいじる所作は、気弱な青年が困って、あのぉー、そのぉー、えぇーっと、は、はい、そうです・・・、といったような感じに見えなくもなく、それがカフカの「変身」を象徴しているのかもしれない。
ダンスは、突然の終わり真っ暗に。自我崩壊、もしくは、グレゴールの静かな死。舞台は、照明とダンスのバランスが素晴らしかった。それにより終始、緊張感が漂っていた。
表現とは現れること(表れること)、なにものかが現れ(表れ)出て、それを感じることが体験と、勅使河原は言っていたように思う。常に最前線で、世界的にも著名な勅使河原三郎、調べると彼は70歳を超えていた。あまりにも、動きは軽やかだった。さすがとしか、言いようがない。