機械仕掛けで無意識の扉を開く幻想舞台美術

「小竹信節 新報」展(座・高円寺)

なんとなく高円寺をブラブラしたい気分になり、座・高円寺の演劇公演で何か面白そうなものあるかなといてみたら、思いもかけず舞台美術家の小竹信節氏の小規模ながら展示があった。ワォ!と心の中で思いました。

私は寺山修司の全盛時を知らないのですが、寺山の死後、意志を継いだ「 演劇実験室◉ 万有引力」の公演を見たことにより寺山修司の凄さに気づき、その世界に引き込まれ、以後、著作や「万有引力」や他の劇団が寺山の戯曲を上演するのを探しては足繁く通った時期がありました。マイブームで恐山にも行った、遅れてきた寺山ファン。

なんといっても一番衝撃を受けたのが「奴婢訓」でした。主人の不在の館で奴婢たちが順番に主人を演じ、巨大な金の靴を巡る奴婢たちの争い、さらに世界観を強化させる独創的な機械仕掛けの装置など、そのクリエイティブなパワーにアングラ演劇とは言え、実験精神に魅了されました。

その「奴婢訓」の舞台美術を担当していたのが小竹信節氏でした。当時、調べると小竹氏は寺山修司が主宰する劇団「演劇実験室◉天井棧敷」の美術監督を務め「奴婢訓」や「阿呆船」、「レミング」などの舞台作品や映画作品の美術など担当していたということがわかりました。

独特かつマルチな発想でインパクトを与える寺山修司、戯曲というテキストから舞台装置という三次元に具現化していく小竹氏。彼もまた異空間、異次元に魂を飛ばすことができるアーティストだと、当時想いを馳せ、お金(予算)のことも全く考えず、小竹氏の展覧会企画したら絶対に面白いと思って無謀にも、会ったこともないのに電話した記憶があります。

運搬するだけでも費用がかかるし、スペースの問題もあること考えずに。「奴婢訓」の異様で幻想的な機械仕掛けの装置が並んでいることを想像するだけで、若い私はワクワク感が止まらず、気持が抑えられず、とりあえず電話してみようと、笑。結局、現実に気づきそれだけで終わったのですが・・・。

そんな今はすっかり記憶の忘却にある若い時代の私を思い出したのです。偶然の些細なギフトを貰った気分になりました。小竹氏のコラージュ作品を観ていると、私の無意識がノックされ暑さも吹っ飛んだのです。

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