劇場の喧騒が聞こえる、ロートレック展

ロートレック!私が10代の時に、初めて美術展なるものに行ったのがロートレック展です。開催場所は京都の百貨店。当時は、百貨店の催事で美術展を開催していることが多くありました。その発展系として今はなくなりましたが、西武百貨店 のセゾン美術館なんかがあります。開催情報はインターネットがない時代なので情報誌です。若い時の経験だからか、ロートレックの作品は鮮明に記憶の淵に眠っています。ということで、SOMPO美術館で「ロートレック展」を開催しているのを知って、行ってきました。

その前に、たまたま「赤い風車 ムーランルージュ」という1952年に製作されたロートレックの自伝的映画映画を見つけたので、その映画を見てから展覧会に行きました。ロートレックは13、14歳の時に両足の大腿骨を骨折するという大けがをして、以来、足の成長が止まってしまったというのは知っていたのですが、彼は南フランスの貴族の生まれ、それも由緒ある大物貴族の血筋だったというのは、映画を観て知りました。トゥールーズという都市名がロートレックの名前入っているのも、そうしたことに関係しているかもしれません。この映画はアカデミー賞を受賞しており、監督は名匠ジョン・ヒューストン。

やっぱり、エピソードを中心に綴った物語を事前に見ておくと、絵画作品を観ても印象が変わってきます。足のコンプレックスからか、歓楽街に出入りして浴びるように酒を飲む。映画においてロートレックが注文する酒はコニャック。そうしたことができたのは、家が裕福だったというバックボーンがあったからかも?映画では店側の対応が、伯爵家ということで、あきらかに他の客と違いました。また、幼い時から絵を学ぶことができ、絵の才能を開花させることができたのも、同様な背景があったからかな、と。しかし、その才能はただ上手というのではなく後世に名を残すほどになるのですから、わからんものです。

映画は、ロートレックはアルコール中毒となり若くして死亡した展開だったので、調べてみたら36歳で亡くなっています。アルコールによる破滅型の人生ではあったものの、生きるエネルギーを描くということに、燃えるがごとく一気に使ったんだろう。

展覧会は、素描が多く展示されていました。一瞬の表情を巧みに描く。描かれたムーランルージュの踊り子やパリの娼婦たちの表情はどこか悲哀を感じさせるのは、ロートレックの悲しみが、どこか投影されているように思います。ドガを尊敬し、ゴッホと交流があったロートレック。まるでスケッチのように書いた線が中心の絵から、人生の深みというか、独特の味わいを醸し出す感じは唯一無二の印象です。

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