生と死、科学の暴走「フランケンシュタイン」でメアリー・シェリーが先取りした感性

約200年前に、「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス」という書物が、イギリスの10代の女性の手によって書かれました。有名な「フランケンシュタイン」の誕生です。この死者を蘇らせるという奇抜な小説は、発表当時は匿名で出されました。なぜ匿名だったのか?この女性作者を主人公にした映画「メアリーの総て」では、当時の女性差別が、そうさせたと描かれています。

しかし小説の評判が高く、実名で出版され、やがてこの小説は、科学的な探求心と人間の野心がもたらす恐ろしい結果を描いた作品として、後世に多大な影響を与えました。何度も映画化され、あるいは、パロディ化もされ、今では世界で知らぬ人はいないといっても過言ではない有名なキャラクターとなりました。このまれにみる作品をつくった10代の女性の名は、メアリー・シェリー。

メアリーの母親は、女性権利運動の重要な人物とされるメアリー・ウルストンクラフト、父親は哲学者のウィリアム・ゴドウィンと知的な家庭に生まれましたが、メアリーの母親は彼女を生むと間もなく死んでしまいます。父親は再婚しますが継母との折り合いが悪く、メアリーは、スコットランドの親戚に2年間預けられます。1814年にmメアリーは詩人のパーシー・シェリーと出会い、彼と恋に落ち、駆け落ち。17歳の時に出産するも、早産で2週間後に子供は死亡してしまいます。

ところでこの「フランケンシュタイン」が生まれたエピソードは有名で、ケン・ラッセルが「ゴシック」という映画にもしています。そのエピソードは1816年の夏、スイスのレマン湖畔で詩人のバイロンとその医師であるポリドリと共に過ごした夜です。当時はシェリーと未婚だったので名前は、メアリー・ゴドウィン。彼女とシェリーは、バイロン、ポリドリは、暇つぶしに物語を書くこととなり、各自が怪奇な物語を書くことになりました。

その夜、彼らは様々な物語を構想し、その中でメアリー・シェリーは「フランケンシュタイン」の初期のアイディアを思いついたとされています。彼女の夢からインスピレーションを得たとも言われており、その夢が後に「フランケンシュタイン」の物語の核となる着想へとつながったと考えられています。

この夜は後に文学史上の重要な瞬間となり、「フランケンシュタイン」はそのような興味深い設定のもとで生まれた物語として知られています。

メアリーの小説が生まれた背景として、イタリアのルイジ・ガルヴァーニによる、生物の神経系と電気の関係を研究があります。ガルヴァーニは、カエルを使って実験を行いました。それは、カエルの脚を解剖し、その神経を露出させ、金属の道具などを使って神経に触れると、筋肉が収縮することが観察されました。彼はこれを、「動物の神経系が電気を通して興奮し、それによって筋肉が収縮する」としたのです。このガルヴァーニの発見は現代医学に重要な基盤を提供しました。神経と電気の関係を初めて示し、神経伝達や筋肉の収縮の理解を促進しました。その結果、神経科学や電気生理学の発展に寄与し、神経系疾患の治療法や神経疾患の理解に貢献しています。小説においてフランケンシュタイン博士が死者を蘇らせる方法として使った稲妻のエネルギーは、こうした背景がありました。

さらには小説には、フランケンシュタインが生み出したクリーチャーが、様々な体の要素の組み合わせからなっており、現在の臓器移植の問題も描かれています。臓器移植は個体死後に行われる医療プロセスです。一般的に、臓器提供者が脳死や心停止など完全な死亡した後、その臓器が移植のために摘出され、移植されます。この臓器移植は、大きな進展を遂げており、現在では、多くの臓器移植手術が定期的に行われ、患者の生命を救うための重要な治療法となっています。こうした点においても現代性を先取りした作品であると言えるのです。

いずれにせよ、約200年前に10代の女性が、科学の発達とその暴走と生命の問題を取り上げた小説を書いたことが奇跡的なことだったと思います。

【いいですか、わたしは今狂人の夢を語っているのではありません。今ここで述べていることは、太陽が天に輝いとぃることよりも確かな真実なのです。これがもたらされたのは何かの奇跡かもしれません。しかし、発見に至る過程は明瞭にして確かでした。昼も夜も信じられないほどの努力と苦労を繰り返し、わたしは生命発生の原因を発見することに成功しました。そして、生命の通わぬ物質に生命を吹き込むことができたのです。】

【ああ、フランケンシュタイン、ほかの人間には優しいのに、なぜおれだけを踏みつけにするのだ。この身体はおまえの正義、いやおまえの正義を受けてしかるべきなのだ。おまえがおれをつくったのだ。おれはアダムなのだ。だが、このままでは何も悪いことをしていないのに、喜びを奪われた堕天使ではないか、あちこちに幸福が見えるのに、おれだけがそこからのけ者にされている。おれだって優しく善良だったのに、惨めな境遇のために悪魔となった。どうかおれを幸せにしてくれ。そうすればもう一度善良になろう】

シェリー・著、小林章夫・訳 (光文社古典新訳文庫)より

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