分断と憎しみ、悲劇と愛「ウエスト・サイド・ストーリー」

映画「ウエスト・サイド・ストーリー」(2021年)

■製作年:2021年
■監督:スティーブン・スピルバーグ
■出演:アンセル・エルゴート、レイチェル・ゼグラー、アリアナ・デボーズ、他

なぜスピルバーグが有名すぎる名作映画「ウエスト・サイド・ストーリー」を作るの?というのが不思議でした。宣伝用のサイトを見ると10歳のころ、この「ウエスト・サイド・ストーリー」のブロードウェイ・オリジナルキャスト盤のレコードを聴き、虜になったという。子供の頃に影響を受けた感性は、のちのちにまで影響を与えるのでしょうね。

とにかくシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」をベースに、自分たちのシマをめぐってプエルトリコ系移民「シャークス」とヨーロッパ移民の「ジェッツ」の2つのストリートギャングが争う超有名なミュージカル映画をあのスピルバーグ監督がリメイクするわけなので、比較もされるだろうし、どんな映画になるんだろうと観る前から期待も高まります。

ダンス・シーンではプエルトリコの若者たちが街中で踊る場面は圧巻で、私はそのシーンが一番よかった。全体としてはよかったのですが、ただ、映画を見ていてトニーとマリアが愛しあうのが、完全な一目惚れであり、それが敵対するグループということで、ハードルのある愛ということで気持ちが瞬時に燃え上がってしまうというのはわかるのですが、それにしてもプロセスがないので、感情移入するにはちょっとばかり違和感も感じたのです。

それとグループの抗争によりベルナルトとリフのリーダー格が死んでしまう。マリアの兄   を殺してしまったのは弾みとはいえトニー。決闘があった夜、自首するとマリアの部屋に来るのですが、そこで彼と一夜を共にしてしまいます。いくら非常事態とはいえ、兄を殺してしまったその日に、様々な感情が渦巻く中で男女の関係になれるのだろうか?超テンションがハイになっている?それもすぐに溶け込めない部分でした。

そんなこともあり、元になった映画はどんな展開だったろうかと思い、私が生まれた年、1961年に製作された「ウエスト・サイド物語」を、DVDで続けてみてしまいました。今から61年前の映画ということになります。スピルバーグ版のベルナルトはボクサーであり、こわもて風、61年版は二枚目のジョージ・チャキリス、そこからしてイメージが違ってきますね。

上記の男女の展開は同じようなもので、そうなんだ~と。61の歳月の隔たりがあるので、古い方は比較的ゆっくりしており、単純のためわかりやすい。スピルバーグ版のもよかったけど、私的にはロバート・ワイズが監督した「ウエスト・サイド物語」の方がいいなと思いました。今の若い子らは、この映画をどうみるんだろう。

映画のテーマは、分断からくる憎しみと悲劇、そして愛。これは61版も今回のも変わりはなかった。分断ということばが流行するように異質性をもつ他者への不理解が進む現代ですが、あまり状況は変わっていないような気もします・・・。ちなみに、私はこの映画を見た後、なぜか、佐野元春の「ロックンロール・ナイト」という曲の中の歌詞♪たどりつくといつもそこには川が横たわている・・・車の中のロミオとジュリエットたったひとつの夢が 今この街の影に横たわる・・・♪を思い出し、頭の中でリフレインしたのでした。

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