諸星大二郎を巡る2冊の本、さらにその深みを知る
諸星大二郎の漫画を読んでいると、数々の古代遺跡が出てきて、実はそこにはこんな意味があったと異界へと通じるスポットであり超古代史的な意味が隠されている?なんて思えてくるわけです。
たとえばムック本の「文藝別冊 諸星大二郎 」(河出書房新社)には、元YMOの音楽界の大御所である細野晴臣のインタビューが収録されており、熱烈な諸星大二郎のファンであることがわかります。そのインタビューには、YMOのサードアルバムに「マッドメン」を入れたり、漫画の舞台になった遺跡巡りをしていたようなことも書かれています。
「マンガで新説を唱えているような、何か初めての論文を読んでいるような、そういう興奮がある。影響されていると思いますね、僕は。だから、『徐福』の足跡をたどったり、太秦神社に行ったりしてね。ひと時はそういうところをグルグル回っていたこともありました」(「文藝別冊 諸星大二郎 」(河出書房新社)より引用)
また、平凡社から出ている別冊太陽の「太陽の地図帖 諸星大二郎 」(平凡社)ではもっとそこを掘り下げており、傑作「暗黒神話」の舞台となった場所、関係するモノやコトを、専門家の文章と共に一冊の本に仕上げています。
このような事態が起こることこそ、諸星大二郎の漫画がいかに魅力的であり、本当はどうなんだろうか?と読んだ者の知的好奇心を刺激するものなのか、ということを顕著に表した例と言えそうです。
たとえば「暗黒神話」に出てくる装飾古墳の色鮮やかで原初的な渦巻き紋様などを見ていると、一度機会があれば私も見てみたいととてもそそられるものがあります。その紋様を見ていると、世界の古代に通じるものを感じますし、どこかのテレビ番組でエジプト学者の吉村作治が日本の古墳の壁面に描かれた船の絵を、エジプトの太陽の船に通じるものがあり、古代エジプトと古代日本の関係性のような話をしていたのを思い出します。
ただ、新しい解釈か?と思われがちな諸星の漫画も、上記のいずれの本に掲載されているインタビューにおいては、全く創作で、遺跡も取材ではなく写真を参考に描いたなどという発言をしています。
「まず自分がダマされるというか、描いていて自分でその気になっちゃうという。そういうのがいいんじゃないでしょうかね。でも本当に信じ込んでしまってはダメで、最後のところではちゃんとウソだとわかっていることが大事だと思います。」(「文藝別冊 諸星大二郎 」(河出書房新社)より引用)
「初めの頃は資料的なものとウソをかなり意図的に混ぜたりしてたんですが、最近は全部ウソのほうがいいかな、という感じになてきましたね。」(「太陽の地図帖 諸星大二郎 」(平凡社)から引用)
比定するためにそうした言葉を引用したのではなく、それが諸星大二郎のでっち上げ創作ストーリーであろうと、漫画だからと片付けられないパワーがあるのと、多分でありますが考古学者らも唸らせる大胆な展開を含んでおり、専門家も一笑にふすということができないのだと想像を膨らませるのでした。つまらない学者の話を聞くより、諸星の漫画を読んでその道を志す、そんなことがあるんじゃないかなあ。