集合無意識のさらなる深奥への旅へ、映画「アルタード・ステーツ」

映画「アルタード・ステーツ/未知への挑戦」(1979年)

■製作年:1979年
■監督:ケン・ラッセル
■出演:ウィリアム・ハート、ドリュー・バリモア、他

映画「アルタードステーツ/未知への挑戦」は1979年に製作され、日本の公開は1981年でした。当時、この映画を映画館で見ました。その時はあの「2001年宇宙の旅」の後半部分の映像を超える映像トリップと体験とあっかのような記憶があり、ワクワクしながら観に行ったのを憶えています。

その時の私は、人の無意識というのに興味を持ち始めた時期だったので映画はとても興味深かったのですが、意識が無意識のさらに奥深くに向かっていくと、時空の枠を超え、さらに肉体まで変化させていくその展開にどうなんだろうか、ともっと違う展開になっていれば映画史に燦然と輝く作品になったのでは?という印象を持ちました。

ちなみにニューエイジ文化が盛んとなり、無意識その先は一体どうなっているのか?そんな聖なるものへの思考が盛んになっていった時、この映画ででてきたアイソレーション・タンクは一時注目されたように思います。根源的なものを探りたい、それは余分な意識が入ってきてなかなか無の状態になり得ない(それでいいと説きますが)、瞑想より合理的、強引にその世界へと引っ張っていくように思えたからでしょう。

今回映画を久しぶりに見たのですが、物理的変化を起こす違和感の印象は変わらずだったものの最初からそのような展開になるのだとわかっていればそんなもんだと思えばいいわけで、逆に人類発生の謎に意識の発生へと自らの体を実験台として臨むウィリアム・ハート演じる研究者の探究的姿勢が印象的でした。なにかに取り憑かれているような、狂気一歩手前、そんな印象です。ところでこの研究者にはジョン・C・リリーというモデルとなった実在の人物がいて、映画にもでてきたアイソレーションタンクの中に何度も入り変性意識の謎をさぐったといいます。

タンクのなかは完全な暗闇で、塩分を含む水は体を浮かせ、いわば水に浮いた脳の状態になる、そこで幻覚を起こさせる植物を飲用し中に入ったら・・・。そうやって書くと、その世界はどうなっているんだろうと興味を引き起こすのですが、一度、タンクではないですが棺のような箱に真っ暗に閉じ込め、そこにヒーリング音楽が流れるリラクゼーション体験をしたのですが、閉所に閉じ込められるという経験と完全に光が入らない状態になり、逆にパニックを起こした経験があります。なので私、アイソレーションタンクは、入ってみたいけど、たぶん不向きなんだろうな・・・と。

ただイスラエルの死海に行った時、体が水に重力に反してプカプカ浮かび目の前に青い空しかない体験をしたときは、なにか空間と一体化するような至福の体験だったんですけど。あまりに気持ちよくてずっとそのような状態にしていると沖合に流されてしまうのでとても危険なのですが。(このような体験をしたのは他にもう一度あります。エジプトのピラミッドの真っ暗になった王の間の石棺に入った時、こちらは意識が天に抜けていくような感じがしました)

いろいろ書きましたが、このケン・ラッセルの「アルタードステーツ/未知への挑戦」は、SF映画なので肉体が変化する展開もありかと現在は理解しつつ、それ以上の見せ場と実験精神が溢れ、かなり印象深い映画の一つです。個人史的にもマイベスト映画の中の一つですね。

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