絶体絶命下から始まるインド聖典「バガヴァッド・ギーター」こそ、コロナ禍に読みたい

インド聖典「バガヴァッド・ギーター」

インドの聖典『バガヴァッド・ギーター』をご存知ですか?

「バガヴァッド・ギーター」は、紀元前5世紀頃から紀元前2世紀頃に古代インドに記されたといわれて、長大なヒンドゥーの叙事詩「マハーバーラタ」の中の一部として収められているインドで最も重要視されている聖典のひとつです。

キリスト教に「聖書」が、イスラム教に「コーラン」があり、仏教には「般若心経」などがありますが、ヒンドゥー教の代表的な聖典が「バガヴァッド・ギーター」。その「バガヴァッド・ギーター」は世界レベルでみると「般若心経」よりもはるかに多く読まれているとか。

ただ、日本ではまだまだ「バガヴァッド・ギーター」(以下、ギーター)を読んだことがあるという方は少ないようです。「聖書」や「論語」のように日本にはその名前さえ聞いたことがないという方も多いのではないでしょうか。実は私もその一人でした。

私がそのギーターの存在を知ったのは、2年前に一緒にチベットとネパールを旅した西川眞知子さんからです。西川さんはアーユルヴェーダの第一人者でありその著書も30冊以上、彼女が最も影響を受けた書物がギーターだと話しているのを聞いてからです。

で、このギーターを調べてみると、ガンジーをはじめ世界中の偉人に影響を与えていることがわかってきました。ざっと上げるだけでも、トーマス・マン、アルバート・アインシュタイン、ルドルフ・シュタイナー、カール・ユング、オッペンハイマー、カミュ、シモーヌ・ヴェーユなどなど。

クリシュナとアルジェナ

なかでも、非暴力を訴えたインド独立運動のマハトマ・ガンジーの座右の書であったことはインパクトを受けました。ちょうど読んでいた現代インドの聖者パラマハンサ・ヨガナンダ「あるヨギの自叙伝」に、ヨガナンダがガンジーを訪問する場面で、ギーターを読むところが出てきて、確かにそうだったんだと。

なぜ、ガンジーがギーターを?と思ったのは、このギーターが戦争の場面から始まるからです。敵対する部族が別れ、その中の勇者のひとりアルジェナが、相手を見渡した時にそこには親族や友人、尊敬すべき師と仰ぐ人たちが見てとれ、戦意が喪失し嘆き悲しむところから始まるからです。

そしてアルジュナの従者が、実はクリシュナという神の化身であることがわかり、クリシュナとアルジェナの問答が始まるのです。クリシュナはそこで、生命の、この世の、宇宙の秘密を語ります。

魂は乗り物をかえて旅を続ける。死はちょうど古い上着を脱ぎ棄てて新しい上着に着替えること。魂は常住、不滅。決して死なない。本当は誰も死なない。クリシュナはこのように魂の永遠性をアルジェナに熱く語りかけています。

クリシュナは、アルジェナに心の弱さを捨て立ち上がれと説くのです。この世に生まれたからには、自分に定められた仕事をひたすら遂行せよ。そしてその行為は執着を捨て結果にはとらわれないことが大切である。これがカルマ・ヨガであり自己成長を促す道なのだと。

クリシュナとアルジェナ

そして、ギーターを読み進めていくと、人を殺してもいいとは決して教えてはいないことがわかります。自己の義務(ダルマ)を放棄すべきではないと言っているのがわかってきます。そして、クリシュナは、さらにアルジェナに宇宙の秘密、神の秘密といった深遠な教えを説いていきます。まさにそれは古代インドの叡智そのものなのです。

このギーターを読んでいると、仏教と似ている部分があるなと思うのですが、当然ですね。釈迦もギーターを知っていた可能性がありますし、下記の上村氏の著書の部分でも書きましたが、日本に流れてきた大乗仏教の仏たちが、ヒンドゥーの神々なのですから。ギーターは仏教にも大きな影響を与えているのがわかります。

この「バガヴァッド・ギーター」は、インドの最高のバガヴァッド(=神)が変身した神格クリシュナが、勇者アルジュナに説いてみせたギーター(=詩)で、「神の詩」と言われているもの。

ガンジーは、想像でしかないのですが、このギーターを心の葛藤の詩として読んでいたのではないでしょうか?ガンジーの徹底した非暴力とインド独立への意志は、このギーターからもインスピレーションを得ていたのではないかと思うのです。

(1)そのギーターですが、いくつかの訳本がでていますが、前述の西川眞知子さんのオススメは「神の詩 バガヴァッド・ギーター」 田中嫺玉・訳 (TAOBOOKS)です。実際に西川さんが持っているこの本を見ましたが、何度も読み返しているためにボロボロでした(3代目の本とのことでした)。 詩の形式になっており、行間もあり短い文章で4行の和訳になっているので、とても読みやすいです。

(2)また、ギーターにはいくつかの解説本もでています。「バガヴァッド・ギーターの世界」上村勝彦(ちくま学芸文庫)は、大学の教諭が書いていることもあって、背景なども書かれておりわかりやすいのと、浅草寺の僧侶の家系の出ということで仏教との共通性も説明されており、仏教がインドから派生したものであるということが、違った面で理解ができます。

(3)そして、「科学で解くバガヴァッド・ギーター」スワミ・ヴァラジェシュワラ大師、岡本直・訳、木村慧心・監修(たま出版)は、ギーターの全訳と共にインド出身でアメリカの大学で博士号を取りIBMのコンピュータ部門に就職後、インドに帰国。ヨガの修行に入り出家修行者となったスワミ・ヴァラジェシュワラ大師という方が、こまかくギーターの詩に対して解説したやや厚手の本です。

(4)最後に紹介するのが、「バガヴァッド・ギーターの眼に見えぬ基盤」ルドルフ・シュタイナー、髙橋巌・訳(春秋社)です。人智学で有名なあのシュタイナーが1913年にギーターについて講演した講義録をまとめたものです。あのシュタイナーが、ギーターについて言及、こちらは解説と言うよりギーターという本の位置づけが、精神世界的な視点から書かれています。

コロナ禍だからこそバガヴァッド・ギータにアクセスし、ヒントを得たい!

絶体絶命下におかれたアルジェナに、クリシュナが説いた「神の詩」。それは、コロナ禍の現在の異常な状態に通じるものがあるとみることができるのではないでしょうか?感染防止のため経済活動に歯止めがかかり、医療現場はひっ迫、この未曽有な状態にすべての人がなんらかの影響を受けており、まさに危機的な状況と見ることができます。これからどうなっていくのか?どうしたらいいのか?そんな不安が世の中を覆っています。

このギーターには、そんな状態下においてひとつのヒント投げかけてくれるかもしれません。

51コラボでは、この「バガヴァッド・ギーター」をテーマに、ギーターの存在を私に教えてくれた前述の西川眞知子さんによる全7回のオンライン講座と特典2本の動画による「バガバッド・ギーター」の叡智を配信中です。西川さん曰く「人生で一番何度もくりかえし読んできた本であり、自分自身の人生を180度変えた本」、

心臓弁膜症という病で、幼少のころから20歳まで生きられるのだろうか?と常に「死」を意識していたという西川さん。その西川さんがこのギータ―と出会い、大きく考え方を変化させたそうです。その後のご活躍は目覚ましいものがあり、インドに渡りアーユルヴェーダやヨガを学び、日本にそれらの文化を紹介してきました。団塊の世代となる彼女は、今も精力的な活動をされています。その姿はとても勉強になりますし、尊敬の念を憶えます。

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