まさかそこにカバラを発見し驚いた水木しげるの漫画

水木しげるの漫画「悪魔くん」と「悪魔くん 魔界大百科」

書店のコーナーで組まれていた妖怪特集。そこで目にしたのが水木しげるの「悪魔くん」の漫画と子供向け復刊書籍「悪魔くん 魔界大百科」という本。懐かしくなり、ちょっと手にしてみて、パラパラとめくってみたら興味が湧いたのでそれを購入。

私にとっての「悪魔くん」は、最近放送されたアニメのものではなく、あるいは、水木しげるの漫画でもなく、私が子供の頃に放送されたモノクロ・ドラマだといえます(1966~67年に放送)。「エロイム、エッサイム・・・」という呪文について歌にもなっていたので、その言葉は今でも覚えています。不思議と子供の頃に覚えた歌は今でも歌えるですね。

まず、漫画の「悪魔くん」、それまでちゃんと読んだことがなかったのですが、読むといろいろな要素が加わっているのがわかりました。メフィストとファウストは当然有名なゲーテの「ファウスト」から由来しているのはわかるのですが、悪魔くんは冒頭で、ユダヤ神秘思想カバラの秘伝の書物である「光輝の書(ゾハール)」「創造の書(セーフェル・イェツィラー)」を読んでいるという部分があるのです。子供向けの漫画なので、まさかと思ったのでびっくりしました。水木しげる氏は魔法に関する様々な情報を盛り込みながら漫画を描いていたというのが、わかりました。もし、私がカバラに興味を持たず、カバラ・セミナーを企画しなかったら、そうした記述は見過ごしていたでしょう。

ネットで調べると、歌になり私も覚えている「エロイム、エッサイム、我は求め訴えたり」という呪文も、ちゃんとベースがあるということがわかりました。私が敬愛する澁澤龍彦の「黒魔術の手帳」にもその記載があるというのです(私はその部分に気づかず読み過ごしていましたが)。メフィストの弱点「ソロモンの笛」は、魔術書「ソロモンの鍵」からおそらくヒントを持ってきているのでしょう。

子供世代に水木氏の漫画に触れた世代にとって、魔法陣を描いて呪文を唱え悪魔=メフィストを呼び出すという、氏のビジュアル面での影響力はとても大きかったように思います。基本、妖怪にしろ、悪魔にしろ、そうした目に見えない世界の住人のイメージ=水木しげるの描く妖怪というのが、当たり前、定番のようにイメージに固定化されているからです。

そして子供向けの「悪魔くん 魔界大百科」の方ですが、こちらにもカバラに関する記載があり、なんと10ページも割いていました。そこには、ゴーレム、ゲマトリア、ノタリコン、テムラといったカバラに関連する用語が出てくるのです。子供の頃からこのような本を手にしていたら、私が子供の頃にタイガーマスク・ブームの影響を受けて昭和プロレスに少しは詳しくなったように、世の中の不可思議な現象に詳しいオカルティストになるんだろうな。

本では世界の悪魔を紹介していますがアゼザル、ケルベロス、ヒュードラーというのまではわかりましたが、ほとんどは知らないものばかり。見ていると悪魔も、善と対峙する絶対的な悪の存在でなく、水木しげるの手にかかると世界を構成するものの一つの要素であり、時にユニークであり、場合によっては愛すべきキャラクター的な部分があるものもある。そんな風に読めるのでした。

悪魔くん 水木しげる漫画大全集 水木しげる 悪魔くん魔界大百科 (小学館クリエイティブ単行本)

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