みんな合わせても、君ひとりの価値もない・・・神話化された華麗なる男の話

映画「華麗なるギャツビー」(2013年)

■製作年:2013年
■監督:バズ・ラーマン
■出演:レオナルド・ディカプリオ、キャリー・マリガン、トビー・マグワイア、他

この「華麗なるギャツビー」は、2013年に製作されたレオナルド・ディカプリオが主演し、バズ・ラーマンが監督した映画。原作はロスト・ジェネレーション世代を代表する小説家F・スコット・フィッツジェラルド。私はこの映画を見る前に、村上春樹が翻訳した「グレード・ギャツビー」を読んでおいたのですが、小説からイメージが飛躍しその世界を形作っていくという点においてバズ・ラーマンの作品は、映像の技術も発達(特にCG、これがなければ全く違う映画になっていただろう)したこともあり、過剰にして華美に、その世界が形作られていました。

それはもう目眩く幻想的なギャツビーの世界と言っていいと思います。この非現実感の連続が疲れてしまうところもあるのですが、神話化された男の話なのでそれはある種の心地よい目の疲れと変化するわけです。

この100年近く前に書かれ、村上春樹が最高峰の小説と絶賛する「華麗なるギャツビー」の映像化において、この作品は一つの頂点をなし得ていると思いました。評論家の評価はわかりませんが、私はとてもいい映画と感じました。なぜなら、ロバート・レッドフォードによるギャツビーは感情移入がしづらいクールなキャラクターでしたが、レオナルド・ディカプリオが演じたギャツビーはクールな面もありながらも、内面的な弱さや未熟さも表情豊かに垣間見せており、庶民感覚ではスーパーマンに近い存在ではあるものの、人間的な部分を多く見せ、ビジュアル的にもめちゃカッコよかったから。

ヒロインのデイジーもミア・ファローのそれよりもキャリー・マリガンが演じたデイジーの方が女性としてのひ弱さもうまく表現されており、刹那に生きながらもギャツビーとの関係をなかったことにするところのしたたかな流れを自然に描いていたと感じたからです。ギャツビーという神話化された男に共鳴できるか?という点がこの物語においては、とても比重があると思うのですが、そこにきっちりとはまったということですね。

ギャツビーという男は、貧しい家庭に生まれ成り上がってきたこと、巨額の富を得るにはそれなりの危ない橋を渡ってきているということ、人を殺したことがあるという噂があるように少なくともそこまでの境地に至るまでの側面を持っているということ、しかし、元々から備わった育ちのよさからくる品性やおおらかさには相当なコンプレックスを持っているということ、その違いにはとても敏感でありこのコンプレックスを隠すために過剰なまでの華美でもって鎧のように身を固めているということ、それらが複雑に錯綜し人格を形成していて、見た目とは違い人の幸せはお金で買えるものではないことを、しかし、お金を持っていると人生の傷をあまり負わなくてもすまされてしまうことがあることを、この映画は伝えているようでした。そしてそれがディカプリオの絶妙な演技と相俟って伝わってきたと思いました。

ロバート・レッドフォード版のギャツビーとレオナルド・ディカプリオ版のギャツビーは、デイジーの描かれ方もあるのですが、鑑賞後の感想は違ったベクトルを持ったものになったのでした。

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